なぜ今になって大騒動になったのか

【デーブ】ジャニーの場合、同性からの被害だしね。自分の性的指向がわからなくなってしまう人もいるかもしれないし、性暴力を「魂の殺人」と言う人もいる。イギリスのBBCでも、有名番組の人気司会者による少年、少女への性的虐待が発覚したんですが、これも被害者が70人以上ですよ? ひどい話です。

2011年にその司会者は亡くなってるんだけど、BBCは徹底的に検証しましたよね。

【中野】2004年当時は騒がれなかったのに、今回は大騒動になったのは日本のそういうコンプライアンスに対する意識が変わったからだと思います? それともBBCが放送したドキュメンタリー『J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル』でなにか新しい事実が報じられたからとかなんですかね?

【デーブ】BBCの番組の影響は大きかったけど、とりわけ新しいことは出てないですよね。むしろ大きかったのはYouTubeで元ジャニーズJrのカウアン・オカモトが告白したことだったり、ネットの「世論」だったかもね。

ホリエモン(堀江貴文)、ひろゆき(西村博之)、成田悠輔の3人も大きかったんじゃないかな。ジャニーズ事務所の姿勢を強く批判したから。

「ジャニーズ帝国」はテレビや新聞、出版も含む各メディアに強い影響力を持っていて、世論を誘導していた面があるけれど、さすがのジャニーズも“ネット裁判所”まではコントロールできなかった。そこが大きいんじゃないですかね。

ネット記事やSNSの影響力の大きさ

【中野】デーブさんもものすごい数、記事出てましたもんね。

【デーブ】取材いっぱい来た。

【中野】ネット記事やSNSの影響力の大きさって海外も同じですよね。#MeToo運動もそうだったじゃないですか。あれはニューヨーク・タイムズによるハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性暴力、セクハラ疑惑報道がきっかけで始まりましたけど、ツイッター(現・X)のハッシュタグが猛威を揮った。ワインスタインの件だけに留まらず、女性に対する男性のレイプやセクハラが多数告発されて。

【デーブ】ちょうどジャニーズ問題の頃、イギリスやアメリカでは人気コメディアンのラッセル・ブランドの性的暴行疑惑が浮上して、大問題になってたんですけどね。

【中野】ケイティ・ペリーの元夫。

【デーブ】そう。ジャニーズ問題ではジャニー喜多川がもう亡くなってるから、彼自身の刑事責任も民事責任も問えないけど、ブランドはロンドン警視庁が捜査しているんですよね。ここでも「ネット裁判所」の影響がとても大きい。本来まだ捜査段階だし、そういう意味では「推定無罪」なんだけど、ブランドは徹底的に叩かれてる。