脳の成長には順序があります

睡眠がなぜ必要か。しっかり寝なければ、脳が育たないからです。脳の発達には、大きく分けて3段階あります(図表1参照)。

1段階目は0~5歳にかけて育つ「からだの脳」、2段階目は1~18歳にかけて育つ「おりこうさんの脳」、そして3段階目は10〜18歳にかけて育つ「こころの脳」です。

まず育てるべきは「からだの脳」です。寝る、起きる、食べる、体をうまく動かすといった機能、内臓の働きや自律神経の調節を行う視床下部などの間脳や脳幹部にあたる部分です。「古い脳」「動物脳」ともいわれ、生きるためにどうしても必要な脳です。

この時期の親の役割は、「昼行性動物」の生活リズムを徹底させること。夜行性の逆ですね。「太陽が昇ったら起きて、太陽が沈んだら眠る」という原始人のような生活リズムです。目覚ましがなくても起きられる。暗くなったら眠くなる。そうすることで「からだの脳」が頑丈に育ち、生きるために必要な本能(なんかおかしいぞと危険を察知する能力)も身につけることができます。

その次に育つのが「おりこうさんの脳」といわれる大脳新皮質です。言語や思考、勉強、スポーツなど技術的なことを担っていて、「新しい脳」「人間脳」ともいわれます。「からだの脳」を追いかける形で、1歳から育ち始め、小・中学校時代に重点的に育ちます。

学校教育は、この「おりこうさんの脳」に刺激を与える活動そのものです。注意してほしいのは、「からだの脳」と「おりこうさんの脳」は、2階建ての家のようなものだということ。1階部分の「からだの脳」が頑丈にできていないと、2階部分の「おりこうさんの脳」をしっかりと支えることができません。

「からだの脳」が頑丈にできている子は、朝は起こされなくてもおなかがすいて目が覚めます。朝ご飯をガツガツ食べて、ウンチをして元気に家を飛び出していく。それに対して「からだの脳」が弱い子は、朝は親に無理やり起こされて、食欲はないけれど怒られるからいやいや朝ご飯を口に運んで、だるいけれど学校に行く。