薬漬けで体調を崩す高齢者

適量ならば体に良い効果をもたらす薬も、上手に分解されなかったり体外に排泄できず過剰に残ってしまえば、毒と同じになるでしょう。人によっては意識障害や内臓の機能障害、寝たきりや認知症などの病気を引き起こす可能性もあります。

高齢者を専門とする医師にとって、こうした薬の調整は常識です。

しかし、日本の大半の医療関係者は、「成人」とみなした患者さんならば、180センチ90キロの20代男性と、140センチで40キロの90代女性に同じ量の薬を処方するのが一般的なのです。これでは、高齢者が薬漬けになって、体調を崩すのも当然のことでしょう。

当たり前のことですが、高齢になるほど体にはガタがきます。ある程度の不調とは付き合っていくのが当たり前なのに、日本では体の悪いところすべてに薬を出して治そうとします。

当然、お金がかかりますし、常時五種類以上の薬を飲んでいれば副作用が急激に増えるので体に悪い。薬によって特定の不具合は解消されるかもしれませんが、そこで得られるメリットよりもデメリットのほうが多くなる可能性が高いのです。

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「この薬を飲めば脳卒中になりませんよ」医者がつく典型的なウソ

みなさんもご存じの通り、子供が飲む薬の量は大人と違います。体格や体の機能が異なる大人と同じ量の薬を飲むと、副作用が大きくなってしまうからです。これは、高齢者も同様に考えるべきなのです。

本来ならば、日本人の高齢者を対象に大規模調査をして、それぞれの年代や体格の人に本当に必要な薬の量を調べ、適正量の薬を処方するように指導するべきなのに、こうした動きをする医療関係者はほとんど見当たりません。

また、すべての薬は、基本的には延命治療の一環です。なぜなら、死ぬ確率をゼロにする薬は、世界中どこにもないからです。しかも、治療をしても、本当に延命できるかどうかの日本でのエビデンスはありません。医療とは万能ではなく、あくまで不確かなものに頼っているに過ぎないのです。

「この薬を飲めば脳卒中になりませんよ」「この薬を飲まないと、確実に心筋梗塞になります」というのは、医者がつく典型的な嘘です。

今一度、「薬を飲む害」について考えていただきたいものです。

なぜ欧米では「高齢者の暴走事故」が話題にならないのか

日本は高齢者に対する医療が非常に手厚い。ただ、多くの医者が勉強をせず、高齢者の症状や治療法について知らないため、私から見ると間違った方向の予防投薬をし続け、高齢者の健康を大きく害しているのが現状です。

血圧や血糖値を薬剤で管理しているせいで、さまざまな弊害が高齢者に生まれているのをご存じでしょうか。