自制できる生徒は対応できるが…

大学の授業に出ている学生たちに聞いても、これまで学校で先生から叱られたことなどほとんどないし、周囲の友だちが叱られるのを見たこともほとんどないという。中学や高校の頃、生徒が悪いことをしても、先生は叱るという感じではなく、「そういうことはしない方がいいよ」といった感じでやさしく「お話をする」のだという。

このように先生たちは、生徒に望ましくない態度や行動がみられても、厳しく指導することができず、やんわり伝えて本人の自覚を促すくらいしかできないのである。先生のやんわりした指摘をもとに自分の問題点に気づき、自ら態度や行動を修正していくことができる児童・生徒はよいが、そもそも自己コントロール力が未発達な場合はなかなかうまくいかない。

アルバイト先で遅刻して店長から叱られて、逆ギレして辞めた友だちがいるという学生たちが結構いるのだが、彼らによれば、これまで遅刻しても叱られることがなかったから、「なんでそんなきつい言い方されなきゃいけないんだ!」とムカついて、我慢できなくなるのだろうという。

クレーマー保護者がいるため厳しくできない

学校の先生たちと話しても、モンスターペアレント、いわゆるクレーマーのような保護者がいて、叱ったり厳しいことを言ったりすると文句が出るため、厳しい指導はしにくいという。

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規則違反を繰り返したり、授業中にいくら注意しても騒ぐのをやめない生徒を怒鳴って叱ると、「親でも怒鳴ったことがないのに、先生が怒鳴るなんて。ウチの子は先生が怖いから学校に行きたくないって言ってるんです。ほめて育てる時代になんてことをしてくれたんですか」などといったクレームが来るため、自己コントロール力を鍛えるのが非常に難しくなっているという。

ある自治体の校長先生たちの集まりで教育問題についての話をした際に、アンケートをとらせてもらったのだが、その結果には、叱ったり厳しい指導をしたりしにくくなっている現状が如実にあらわれていた。

「以前と比べて生徒をほめることが多くなった」肯定79.5%、否定6.8%
「以前と比べて生徒を叱ることが少なくなった」肯定61.3%、否定20.4%
「生徒をほめなければならないといった空気が強まっているのを感じる」肯定77.3%、否定4.5%
「生徒を厳しく指導するということがやりにくくなっている」肯定86.4%、否定11.3%
「生徒を叱るべきときでも叱りにくくなっている」肯定54.5%、否定22.7%