不調がないなら「受けない」のも選択肢

そもそも、「正常値」とはどのように決められているものなのでしょうか。

日本では、ほとんどの数値が、「健康と見なされる人の平均値」を中心に、95%の人たちが収まる範囲を「正常値」としています。その範囲からはみ出した5%は「異常値」とされます。つまり、個々人の実際の健康状態とは無関係なのです。

そう考えると、数値に振り回されることに意味があるのか、わからなくなってくるのではないでしょうか。

定年後は、会社で健康診断を「受けさせられる」ことはもうありません。

住んでいる自治体が案内を送ってきたり、かかりつけ医がすすめてきたり、配偶者に誘われたりと、ケースはさまざまですが、いずれの場合も、受けるなら「自発的に」受けに行くことになります。

もし、「数値に一喜一憂したくない」「不調もないのに、血圧を下げろと言われたら嫌だ」といった思いがあれば、あえて受けないのも一つの選択です。

逆に「不調がある」ときは、放っておいてはいけません。体の声にはしっかり耳を傾けるべきです。

「怖いから直視したくない」と思うのは、日本人の悪いクセです。不安だからこそ現状を明らかにし、不調を取り除くための治療を受けましょう。

写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

自分の感覚が一番頼りになる

体調が悪くないのなら健康診断は受けなくてもいいとお話ししましたが、自分の体調は、どうチェックすればいいのでしょうか?

それは、自分の体の声を聞けばいいのです。

頭がボーッとしていないか。体が重くないか。どこかに痛みはないか。食欲はあるか。よく眠れるか。お通じの具合はどうか。そうしたことに意識を向ければいいだけです。

これは、定年後だからできるチェック法だとも言えます。

定年前は、昼も夜もなく働いて、疲れているのが当たり前。そんな時期を長く過ごしてきた方が多いでしょう。そんな生活では、不調に自分で気付くのは難しかったと思います。逆に言うと、そのころは、会社が用意した健康診断を受けて数値で自分の体の状態を知ることにも、一定の意味があったかもしれません。

定年退職を迎えると、そうした体への負担が減り、自分の体調に敏感になれると思います。