肉を食べないとがんのリスクが上がる

アメリカ人と日本人では、もともとの体質も食生活も異なります。寿命を延ばすための対策も違って当然です。

何しろ日本人の死因の1位はがんなのに対し、アメリカ人の死因のトップは心筋梗塞などの虚血性心疾患です。

日本はがんで死ぬ国なのに、心筋梗塞で死ぬ国のデータを持ってきても、あてになるはずがありません。

アメリカが心筋梗塞で死ぬ人がもっとも多いのは、肥満が多いからです。それも日本人の感覚からしたら超肥満です。

BMI(肥満指数)という値があります。体重(kg)を身長(m)の二乗で割って求められる数値ですが、これが25以上だと日本では肥満ということになっています。

ところが国際的には30以上が肥満となっていて、この基準にあてはまる肥満がアメリカでは30%以上もいるのに対し、日本で同じ基準の肥満の人は3%しかいません。

BMI30がどのくらいかというと、身長が170cmの人なら、89kgで30を超えます。アメリカではこのくらいの肥満の人が、10人のうち3人もいるわけです。

このデータが日本人にあてはまるわけがないでしょう。

このような肥満の人はコレステロール値が高くなって、動脈硬化が進みやすく、心臓の血管が詰まって心筋梗塞を起こしやすいとされています。

コレステロールを無理に下げると免疫力も下がる

一方で、コレステロールは体になくてはならない物質で、免疫細胞をつくる材料になるもの。

つまり、コレステロールを無理に下げると、免疫力が下がってしまうのです。

免疫力と関係が深い病気ががんです。人体は細胞分裂しながら、新しい細胞と入れ替わっています。その際、古い細胞の遺伝子がコピーされて、新しい細胞がつくられます。

このとき、ミスコピーが起こることがあります。

これは人体ではしょっちゅう起こっていることで、ミスコピーされた細胞は、免疫によって駆除されます。

和田秀樹『60代からの見た目の壁』(エクスナレッジ)

しかし、免疫力が低下していると、免疫の監視の目をかいくぐってミスコピーした細胞が増殖を始めます。これが大きくなったものががんです。

前述したように、コレステロールは免疫細胞の材料ですから、これが少なくなると免疫力も低下します。

だから、がんで亡くなる人を少なくしたいのであれば、過剰なコレステロールの抑制は、ほとんど意味がありません。

いずれにしても、日本人の肥満はさして深刻な問題ではありません。それよりも、もっと肉を食べてコレステロールが減らないようにしたほうが、がん対策にはなるのです。

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