規制された成分に似た合成化合物が検出

大麻には100種類以上の「カンナビノイド」と呼ばれる有効成分が含まれているが、そのなかで最も重要な作用を持つとされるのがCBDとTHCである。

CBDには抗炎症・抗不安・鎮痛などの治療効果があり、心身への悪影響はほとんど報告されていないため、医療や健康・美容などに使われることが多い。米国では医療用に使われる大麻はCBDの含有量を高めるための品種改良が行われている。

一方、THCには高揚感、解放感などの精神活性作用があり、副作用として軽度だが、脳や精神への悪影響、記憶障害、運動機能の障害などが指摘されている。大麻が多くの国で禁止されてきた大きな理由の1つは、THCが含まれているからだが、近年はその危険性は比較的低いことがわかってきて、それが世界的な大麻解禁の流れにつながっている。

米国立衛生研究所(NIH)の医学文献情報データベースでも、大麻使用のリスクはオピオイドの使用に比べて大幅に低いことを示す文献が提示されている。

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しかし、日本ではTHCは厳しく禁止されているため、大麻グミの業者は法に触れないようにTHCの化学構造式を少し変えたりして類似成分をつくり、それを使ったグミを「合法大麻」として販売しているのである。

前述の体調不良者が食べたグミにも「HHCH」(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)というTHCに似た成分が含まれていたことがわかっている。この成分にどの程度の健康への悪影響があるのか定かではないが、それが体調不良の原因になったことは間違いないだろう。

かつて社会問題化した「危険ドラッグ」

大麻グミ問題の本質は業者が違法のTHCに似た成分を使って合法大麻として販売しているところにあるが、本物の大麻成分ではないので、正確に言えば「疑似大麻グミ」ということになる。

実はこれと似たような問題は2012年ごろに「危険ドラッグ問題」として注目された。当初は「脱法ハーブ」「合法ドラッグ」などとして販売され、その後、政府が名称を「危険ドラッグ」に変更したが、それ以前に「脱法」「合法」が付いていたので、違法性も危険性もないというイメージが人々の間に広まってしまった。

新宿・歌舞伎町には乾燥植物片に合成物質を混ぜたハーブや、大麻の類似成分でつくった「合成カンナビノイド」などが売られ、若者や中年サラリーマンなどが気軽に出入りしていたという。普段はまじめで遵法精神の強い日本人も「法に触れない」ということで、気軽に薬物に手を出していたのだ。