「手ごろで高品質」日本製の化粧品が売れない

わが国の大手化粧品企業の業績動向などからも、その傾向は読みとれる。わが国の化粧品は、安心、安全、手ごろな価格帯、かつ高品質が評価され、中国で人気を獲得した。しかし、ここ数年の間、国内の大手化粧品企業は中国市場で、収益を増やすことが難しくなった。要因の一つが、消費者の節約志向の高まりだ。

リアルからネットへ販売戦略を強化したところ、価格競争の激化に巻き込まれるケースもあるようだ。11月13日以降、中国での収益が想定を下回るとの懸念が上昇し、株価を大きく下げるわが国の化粧品関連銘柄もあった。中国経済の減速に影響され、わが国では精密な工作機械メーカーの業績下振れ懸念も高まった。

個人消費の停滞に加え、中国では物価下落も鮮明だ。10月、川上の物価の動向を示す生産者物価指数(PPI)は前年同月比2.6%下落した。消費者物価指数(CPI)は0.2%下落した。中国経済はデフレ環境に陥りつつある。企業の設備投資など固定資産投資も停滞している。

不動産需要という屋台骨が崩れ始めた

かつて、中国の不動産関連の需要はGDPの3割程度を占めるとの試算もあった。土地需要の高まり、鉄鋼などの建材や建機などの生産、住宅ローンの貸付など、不動産投資は中国経済の成長に大きく貢献した。

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土地需要の高まりを背景に、地方政府は不動産デベロッパーに土地の利用権を譲渡した。地方政府は得た歳入の一部を道路、鉄道の建設などインフラ投資の実行資金に用いた。土地譲渡益は、年金、医療など社会保障も支えた。こうしてリーマンショック後の中国経済は、不動産などの投資に依存した。

しかし、右肩上がりの状況がいつまでも続くとは考えづらい。2020年8月、中国政府が不動産バブル対策として“3つのレッドライン”と呼ばれる不動産融資規制を実施すると、バブルは崩壊した。投資に頼った経済運営は限界を迎えた。景気の減速は鮮明化し、2023年6月、若年層の調査失業率は21.3%に達した。