不動産頼みだった地方財政は危機的状況に

足許、バブル崩壊の負の影響はより深刻だ。10月には碧桂園(カントリー・ガーデン)の米ドル建ての社債がデフォルトに認定された。それは、バブル崩壊への政策的な対応の遅れを確認する機会になった。それにもかかわらず、政府は大手銀行、不動産デベロッパーなどに公的資金を注入し、不良債権の処理を進める考えを明確にしていない。

不動産バブル崩壊は、地方政府の財政悪化にもつながった。リーマンショック後、銀行からの資金借り入れが規制されてきた地方政府は、地方融資平台と呼ばれる企業を増やした。地方融資平台は、債券発行などを行い、インフラ投資や不動産開発などの資金を調達した。それによって、地方の幹部は習政権が指示した経済成長率の目標を実現した。

引き換えに、地方融資平台の債務残高は中国のGDPの53%(66兆元、約1320兆円)に増加した。中央政府は地方債の発行枠を拡大し、地方政府に融資平台の債務の一部を肩代わりするよう指示を出したが、債務残高が大きいため根本解決には程遠い。

社会保障不安、企業の中国脱出、台湾有事…

短期間で中国の景気が下げ止まる展開は想定しづらい。むしろ、不動産バブル崩壊の後始末に時間がかかり、デフレ経済が深刻化する可能性は高い。それは、1990年代後半のわが国も経験した。加えて、中国では社会保障制度の不安も高まる恐れがある。

足許、海外の主要投資家に加え、多国籍企業も“脱中国”を急いでいる。アップルなど多くの企業が自国内や友好国、中国よりも人件費の安いASEANの新興国やインドに事業拠点を移す。

近年、習政権の政策運営方針は経済重視よりも、権力基盤の強化など政治優先に向かっている。企業経営者が中長期の視点で中国経済の展開を予想することは難しい。政策リスク、人口減少を背景とする人件費増加を回避するために、多国籍企業は中国以外での事業運営を強化しなければならない。

台湾問題も、企業の脱中国を勢いづかせた。特に、先端分野の半導体に関しては台湾依存度が高い。半導体などの先端分野で米中の対立も先鋭化しそうだ。地政学リスクなどに対応しつつ安定した半導体の調達を目指すために、日米欧政府は産業政策を修正し、大手半導体メーカーの直接投資の誘致を増やそうとしている。