「眠たくなる説明」しかできない人は危ない

しかしAは、次のように進化することが可能だ。

C)生成AIを使いこなすスキルをもった会社員

では、このことをスキルの種類から考えてみよう。その会社でしか通用しない知識やスキルと対をなすものに「ポータブルスキル」と呼ばれるスキルがある。どんな仕事や職場にも“持って行くことが可能で、しかも活用できる”汎用性の高いスキルだ。

たとえばパワーポイントに記載された会社固有の商品知識とその説明は、ほぼその会社でしか通用しないタイプの知識やスキルだ。一方で、人を成長させるための対話などのマネジメントスキルは、どの会社でも使える可能性が高い。

ある取引先主催のサービス説明会に参加した私の同僚は、60分間それを聞き続けることができず、大いびきをかいて寝てしまった。その取引先からクレームが入り、始末書を書くこととなった。

これを「引いて考える」と、取引先の説明者が視界に入る。どうやら説明者は60分間資料を読み上げただけのようだ。寝てしまった同僚が悪いのは明白だが、説明者がAIどころか読み上げソフトレベルの仕事しかしないとしたら、今後の参加に注意が必要だ。その説明者は「商品情報」というその会社でしか通用しない知識と「読む」という平凡なスキルしか持ち合わせていないのかもしれない。

引いて考えれば、AIと共存する方法も見つかる

似たようなタイプの説明会で、聴衆に感動を与えつつ、わかりやすく、ぐいぐい惹きつけながら話す人もいる。これはプレゼン力という、どの会社でも活用できるポータブルスキルだ。ポータブルスキルには、その会社でしか通用しない知識やスキルを強化する力が備わっている。

・その会社でしか通用しないスキル商品情報(知識)を語る→誰でも手に入れられる(AIを含む)
・感動を与えるほど魅力的な説明→希少価値がある

単なる商品情報(知識)に具体的な使用例などを交えてわかりやすくプレゼンできれば、聴衆は睡魔に襲われることなく60分を過ごせるだろう。

商品情報を読み上げるだけでは、こうはいかない。

この違いは、その会社でしか通用しない知識が、プレゼン力というスキルの力で強化されたから生じたものだ。このプレゼン力というポータブルスキルは「どこに転職しても役立つスキル」と言っていいだろう。

田中猪夫『仕事を減らす』(サンマーク出版)

プレゼンをうまくこなすポータブルスキルをもつ人は、自分に価値があることがわかっているため、自信に満ちている。同じように、

C)生成AIを使いこなすスキルをもった会社員

は、排除される不安などない。当然、

B)その会社でしか通用しない知識やスキルを獲得した生成AI

と棲み分けし共存できる。このように「引いて考える」と、生成AIを使いこなすというポータブルスキルの獲得は必要性が高いことがわかる。

出典=『仕事を減らす
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