※本稿は、田中猪夫『仕事を減らす』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
AIは「博学な指示待ち部下」と考えるとわかりやすい
ChatGPTの登場で一気に注目を浴びている生成AIは、地球上の誰よりも多種多様な本とインターネット上のあらゆる情報を読み込んでおり、それに基づいて新しいものを「生成」できる。
しかし、仕事を大きく減らしてくれる「小さなイノベーション」を生み出す3つの思考法である「引いて考える」「組み合わせ」「試す」のうち、「組み合わせ」が苦手なことに気づくだろう。
生成AIは与えられたデータからのみ学習しているため、学んでいないデータの「組み合わせ」ができないからだ。
生成AIに質問や指示をすることを「プロンプト」と呼ぶことは、ご存じかと思う。いま生成AIを仕事に役立てるなら、博学な指示待ち部下を上手に動かすような質問や指示(プロンプト)が必要だ。ただ、どれだけプロンプトを工夫しても「組み合わせ」を導き出せないことがある。
であれば、知識を獲得するツールとして使うのはどうだろうか。
つまり「組み合わせ」は人間が行い、知識のみ生成AIから得るという使い方だ。
少しわかりにくいかもしれないので、さらに詳しく見ていこう。
組み合わせを求めず、「知識を獲得するためのツール」と割り切る
じつはAIには2つのとらえ方がある。
一つは人間の知能をコピー、または再現しようとする技術やシステムをめざすもの。これを人工知能(Artificial Intelligence)という。
もう一つは、人間の知能を補完・拡張するための技術やアプローチをめざすものである。こちらは拡張知能(Augmented Intelligence)という。
生成AIは、人工知能としても拡張知能としてもとらえられ、どちらの要素も備えている。となると、使う側が知識を求めているか創造性を求めているかでプロンプトが違ってくる。
ただ、生成AIは基本的には人工知能だ。いずれ異なる知識を「組み合わせ」ることで創造性をもつだろう。しかし、それを導き出すプロンプトを設定するのは難しく、逆にプロンプト自体に創造性が必要な場合もある。
だとしたら、テーマの複雑性によって「組み合わせ」は人間が考えるものとし、生成AIは知識を獲得するためのツール(拡張知能)として割りきって使うのが、現段階でのおすすめだ。その方法を身につければ、同僚が1日10時間をかけて仕上げる以上の成果を、1日わずか1時間働くだけで上げられるようになる。
話を整理すると、次のようになる。