減反は税金を払って生命を危険にさらす政策

医療のように、財政負担が行われれば、国民は安く財やサービスの提供を受けられる。しかし、米の減反は補助金(納税者負担)を出して米価を上げる(消費者負担増加)という異常な政策である。

国民は納税者として消費者として二重の負担をしている。主食の米の価格を上げることは、消費税以上に逆進的だ。農林水産省は、JA農協の利益のために、食料危機の際に最も頼りになる米の生産を減らしてきた。国民は税金を払って自らの生命を危険にさらしているのである。

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本当に効果的な食料安全保障政策

どうすれば、いま迫る食料危機に対応できるのか。

生産減少を目的とする減反で、単収(面積当たりの収量)向上は抑制された。1960年には日本の半分しかなかった中国にも抜かれてしまっている。現在の水田面積全てにカリフォルニア米程度の単収の米を作付ければ、1700万トンの生産は難しくはない。国内で700万トン消費し、高品質と評価の高い日本の米を1000万トン輸出すれば、輸出額は2兆円となる。現在の穀物等の輸入額1.5兆円を上回り、穀物貿易は黒字となる。米の輸出で小麦等を輸入して、なおおつりがくる。買い負けの心配はない。

最も効果的な食料安全保障政策は、減反廃止による米の増産と輸出である。平時には米を輸出し、危機時には輸出に回していた米を食べるのである。平時の輸出は、財政負担の必要がない無償の備蓄の役割を果たす。1700万トンあれば、危機時に必要量を確保できる。

かつては、6月に麦を収穫してから田植えをしていた。しかし、ほとんどが兼業(サラリーマン)農家となり、まとまった休みがとれる5月初めに田植えを行うようになって、二毛作は消えた。国産麦の生産は、1960年の383万トンから、わずか15年後の75年に46万トンへと、8分の1に減少した。現在は2000億円もの財政負担をして生産を振興しているが、115万トンの生産にすぎない。

減反を廃止すれば、米の生産を1000万トン増やして、なお、国民は3500億円の減反補助金の支払いをしなくても済む。米価が下がって困る主業農家への補塡(直接支払い)は最大でも1000億円くらいで済む。