「不穏当発言」を川勝知事が安易に認められない事情

本会議で釈明に追われた川勝知事は「観光振興策として東アジア文化都市のレガシー拠点となる『発展的継承センター』とする共通理解がある」などと述べた上で、「職員レベルの内部検討は進んでいるが、何も決まっていないのが実情だ」と言い逃れした。

もし、川勝知事の言う通りに何も決まっていない段階ならば、三島商工会議所を含めた外部の民間団体に、「三島にレガシー拠点の継承施設を置く」などの断定的な発言をすること自体がおかしい。

無責任な発言であることを川勝知事が認めているのか、単に県議会の追及をかわしたい逃げ口上なのかのいずれである。

当然この回答に納得できるはずもなく、本会議の緊急質問で、自民党県議が「不穏当発言ではないか」とただした。

筆者撮影
川勝知事の「不穏当発言」を追及する自民党県議(静岡県議会本会議場)

これに対して、川勝知事は「不穏当ではない」と否定し続けた。

川勝知事にはやすやすと「不穏当だった」と認めて、謝罪することのできない理由があった。

10月6日の県議会総務委員会で、知事の給与減額条例案に伴い5項目の「附帯決議」を全会一致で採択している。

そのうち、最も重要な1項目に、「今後、仮に不適切な発言があった場合には辞職するとの発言に責任を持つこと」が含まれていたのである。

つまり、川勝知事は発言を「不穏当」を認めたと同時に、「不適切な発言があった」と追及され、辞職を求められることは目に見えていた。

あくまでも川勝知事はしらを切るしかなかった。

結局、審議は平行線をたどり、自民党県議団の追及もそこで終わりだった。この問題を閉会中審査で追及することを決め、12月県議会に先送りした。

仮に、9月県議会で、「不穏当発言ではない」とする川勝知事の認識の不自然な点をあぶりだして、政局に持っていったとしても、6月県議会同様に知事不信任決議案の否決という結果は見えていた。

つまり、打つ手なしなのだ。

過去にも文化事業で「暴走」「失言」を繰り返した

川勝知事の「暴走」が問題となったのはこれが初めてではない。

「不適切な発言があったことを認め、すべて撤回します。不信を抱かれた方々におわびします」

川勝知事がこのように自民党県議団に謝罪をしたのは、2020年1月30日、いまから4年近く前の話である。

発端は2019年12月20日付静岡新聞に載った『「文化力の拠点」巡り 自民念頭に知事「ごろつき」批判』という小さな記事だった。