ファストフード店を対象にした初の賃上げ法案

ファストフード業界を対象とした賃上げ法案は、店舗オーナーらの激しい反発をかわして実現した。通称FAST法(ファストフード責任・規範回復法)と呼ばれる。全国に60店舗以上を展開するファストフード店の労働者を対象に、最低賃金の引き上げを定めている。

本来のFAST法は昨年9月5日、ニューサム州知事の署名を経て発効した。だが、労働組合側が支持する一方、業界やフランチャイズ店オーナーらが反発。反対派による署名活動が規定数を満たしたため、2024年に予定される住民投票まで効力が停止されていた。

今回、州知事室の仲介を経て、労働組合側と企業・オーナー側が和解。修正議案の議会通過に至った。ニューヨーク・タイムズ紙は、「カリフォルニア州の労働団体とファストフード企業が労働者規制をめぐる合意に達し、同業界の最低賃金が時給20ドルに引き上げられる道が開かれた」と報じている。

写真=EPA/時事通信フォト
2023年9月28日、米国カリフォルニア州ロサンゼルスの労働組合にて、ファストフード従業員の最低賃金を引き上げる新法案の記者会見に臨むカリフォルニア州知事ギャビン・ニューサム

賃上げ続々…公立小学校の新任教師で年収890万円のケースも

アメリカでは物価高騰に伴う賃金の上昇が続いており、ファストフード業界に限った話ではない。米ユタ州のディザレット・ニュースは、公立小学校の新任教師の年収が6万ドル(約890万円)となっている例を報じている。

アイオワ州出身のマーガレット・ジョンストン氏は、教職員への待遇が充実しているユタ州でキャリアをスタートさせ、6万ドルの年俸を確約された。

アイオワで生まれ育った彼女だが、教育実習の機会を得た際、ニュージーランドとユタ州キャニオンズ学区で8週間ずつ教えるという「大胆な選択」をしたという。研修を終えるとユタ州に戻り、サンディのクレセント小学校で5年生を教えることになった。

ジョンストン氏はユタ州を選んだ理由について、「非常に支援されている環境が整っており、設備が充実した学校、豊富なスタッフ、最新の教育技術など、Canyons地区は私にとって完全なオファーでした。そして、それらすべてに上乗せする形で、給与が魅力だったのです」と語る。

ユタ州はまた、スキーやハイキング、マウンテンバイクなど、多種多様なレクリエーションで若者に人気だ。こうした環境も若い教師たちを引き寄せているようだ。

低年収では優秀な人材は集まらない

もっとも、全米で教師の給料が高いわけではない。年収6万ドルを手にしたジョンストン氏だが、仮に出身地のアイオワ州で務めていた場合、初任の年収は3万5000~4万ドル(約520万~600万円)であった。