もう一度言います。良い企業の株式に投資すれば、将来の見通しに大きな乖離かいりは生じず、着実にリターンを取れる可能性が高いでしょう。しかしながら、その見通しと、それに基づく「確実性の高い」リターンは、その多くの部分を多くの人によって評価され、既に株価に織り込まれているものでもあります。特にこれまでの日本株市場では、ガバナンスの効いた欧米市場と比べると、「良い企業」は全体の一部に過ぎません。

その分、投資家から選別保有される度合いも高まり、株価評価に関しても、プレミアムがより高く付与される傾向があります(株価が割高に評価される)。すでに割高に評価されているとすれば、今後の株価上昇余地が限られる上、マクロ環境や個別の事由で業績見通しなどが下方に修正されたりする場合には、下落余地が大きくなるリスクがあるのです。

「利益の変化率」に着目したほうがいい

現状があまり良くない企業だったとしても、何かのきっかけで大きく変わる可能性を持っているのだとしたら、利益の変化率の大きさという点で、はるかに大きなリターンが得られる可能性があるわけです。株式に投資して利益を狙うのであれば、利益の変化率にこそ着目するべきなのです。

PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本比率)といった株価指標の数字も大事です。それらも見ながら、「独自の付加価値、他と違う運用テイストに基づく存在意義」を志向する職業投資家の私にとって、投資先を選ぶうえで重要な要素のひとつが、変化率なのです。

中山大輔『日本株で30年 好成績を上げたファンドマネジャーが明かす 逆転の思考法』(PHP研究所)

これはあくまでも個人的な見解ですが、自分の好きなように運用してくださいと言われたら、「時価総額が大きくて、ROEが高く、IRも非常に充実しており、多くのアナリストから非常に高く評価されている、JPXプライム150指数に採用されているような企業」には、投資しません。

いや、すみません……投資しないわけではなく、間違いなくこれらの企業は株式投資の王道、中核をなす企業なのですが、私の場合はこれらを一定程度ポートフォリオのベースにしながらも、できるだけ違った目線で評価できる、あるいは評価できそうな動きがある企業を探して組み入れたい、それが面白くて好きである、ということなのです。

それが結果的に、他の投資家とは異なる運用となり、大きなリターンをもたらしてくれる可能性につながるのです。

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