人材が少ない中小企業のトップはつらい

ところが中小企業ではそんな贅沢は言っていられません。部長に予実管理を完全に任せることができることは稀です。もしも選任した部長が予算をまったく守ってくれなくても、ほかに選択肢がありません。だから中小企業の経営者は全部署の部長級の仕事を肩代わりしなくてはならなくなります。

これには例外があって、すでに黒字が出ている部署の場合、部長級の人間に創業社長のように事業を作り出して運営していく能力は求められません。大企業で部長級の人間がたくさんいるというのも、「すでに回ってる仕事をそのまま回す」ことを求められたり、「すでに負けが決まっている仕事の敗戦処理をする」ことを求められたりと、役割が限定されるからです。

中小企業はそんなにたくさんの事業を抱えていないので、「敗戦処理」のためだけの部長を雇っていても、すぐに使い道がなくなってしまいます。

AIなら社内のやりとり、雰囲気も把握できる

会社経営のリアル、で筆が滑ってしまいましたが、AIに経営を任せたいと考えている経営者はたくさんいると思います。第一に、会社でなにが起きているのか、経営者は実際には把握できないからです。

たとえば全部署でやりとりされているチャットのログを経営者が全部チェックするというのは非現実的です。場合によってはプライバシーの侵害にも当たります。

また、最近はリモートワークが増えて、社内の人間関係すらよくわからなくなっています。誰が誰と仲が悪いとか、そうでなくても会社全体の雰囲気がいいとか悪いとか、そういうことを経営者は会社に行ってなんとなく確かめていたのですが、リモートワークが中心になるとそれもできません。

写真=iStock.com/metamorworks
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まあそもそも、会社に行って「なんとなくみんながやる気を持って働いているか」を判断するということ自体が相当アナログというか、非論理的なやり方なので、これが大好き、という経営者はほぼいないと思います。

AIはそういう判断をすべて任せるのにふさわしい素質と能力を持っています。