人間が作っている限り、数字も信用できない

社員が100人を超えると、経営者から社員が見えにくくなります。

経営者と社員の間に課長、部長、担当役員というのが立ちはだかっていて、それぞれが部下と経営者が直接話すのをできるだけ避けようとします。

現場の不満を告げ口されるかわからないし、仮にその告げ口が間違ったものだったとして、自分たちは別のロジックでちゃんと弁明できるとしても、その弁明に時間を割かれるのが面倒だからです。

ただ、会社の利益が出ていない場合、必ず経営方針に問題があるものです。「計画通りに行ってない」のは、計画が間違っていたからです。

本来は、感情的な情報を排除したはずのPLとBSが、実は「そうしたいという気持ち」から作られていることもあります。つまり、「今期はこれだけ売り上げたい」という願望と、「今期はこれだけの売り上げしか望めないだろう」という現実が乖離しているケースがままあるのです。

私が創業期に、自分一人だけで会社の予実管理(予算と実績の管理)をしていたときは、案件ごとにそれぞれ「確度」をレベル分けし、「話だけ来ているもの」は0.1、「話が進んでいるもの」が0.3、「契約書のやりとりをしているもの」を0.5、「契約されたもの」を0.8、「納品が完了し、請求書が書けるもの」を1.0として金額に乗じることで売り上げ予測をしていました。

これが意外と当たるのです。

経験則的に「話が進んでもポシャる確率は30%」であるとか、「話しか来ていないものが実現する確率は10%」とか、わかっていたんですね。

数字を管理できない管理職は交代させられる

ただ、人数が増えてくるとこのやり方での予実管理は難しくなってきます。

経営者が感知できない社員間のいざこざや、部署間の対立など、人間の感情と言った一番面倒臭い要素が出てきて、数字だけ見ても管理できなくなってくるのです。

大企業では、この数字の管理は部長の仕事になります。大企業の部長は、予算、人事を自由に使えますが、会社から与えられた目標に対してきちんと予実管理ができなかった場合、役職を外されることがあります。

なぜ企業がそんなことができるかというと、部長級の仕事ができるように、時間をかけて丁寧に育てられた社員をたくさん抱えているからです。

いくら部長を解任しても、部長級の仕事が務まる人はいくらでもいるので枯渇しないのです。なんなら外部から連れてくるということもできます。