「強み」を見つけるにはどうすればいいか

ただここで問題になるのは、一体「強みとは何か」ということです。

強みを活かす経営の素晴らしさは、「全員がハッピーになること」、この1点に尽きると思います。しかし実現する難しさもあります。その原因は、そもそも「強みとは何なのか?」がわからないこと。その強みを活かした「成果とは何か?」や、「強みを成果にどう繫げればいいのか?」がわからないことです。

しかしここで、本項冒頭に挙げたドラッカーの理論に戻ると、成果とは、「①直接の成果」「②価値への取り組み」「③人材の育成」ですから、強みを(成果に)活かす経営とは行き着くところ、各人の持っている性質(=ストレングス・ファインダー的要素)を、この上の3つに繫げる“組み合わせ”を見つけることなのかもしれないとわかります。

僕は何らかの成果を出すには「フォーメーション」がとても重要だと思っている(「フォーメーション理論」と呼んでいる)のですが、この考え方に近いですね。

ちなみに、ドラッカーに限らず、日本の歴史において名を遂げた名将はみな人事戦略に長けていました。

歴史上の名将は皆人事戦略に長けていた

僕は「名将の人事戦略」を研究してみたことがあります。

徳川家康から、豊臣秀吉、織田信長、毛利元就、武田信玄、上杉謙信、黒田官兵衛に石田三成……。彼らはなぜ生き残り、戦果を挙げることができたのかということを、主に人事戦略の観点から考察したのです。

北野唯我『キャリアを切り開く言葉71』(KADOKAWA)

そして結論として導いたのは、「歴史上、“弱小”から成り上がった将軍で、人事戦略に疎かった人物はほぼいない」というものです。正確にいうならば、年功序列的(=非実力主義)な人材登用でのし上がった人はほぼゼロ、という結論です。

たとえば、有名なものであれば、黒田官兵衛は「人を夏の火鉢、ひでりの雨傘みたいに使うのはダメ」というようなことを言っていたりします(夏の火鉢=暑いので不要、ひでりの雨傘=無駄)。

あるいは武田信玄も人事戦略に強かったとよく言われています。「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」という言葉は有名ですよね。

日本以外でも、曹操も「唯才是挙」(才能をもってのみ人材登用せよ)という言葉を残しているのです。

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