養育費の支払いにも抵抗

その後、A子さんは両親に手伝ってもらいながら仕事と子育てを続けました。

別居後、離婚の条件として、双方の収入に応じた養育費の支払いを求めると、夫は抵抗しました。「子どもが欲しいと言ったのは妻なのだから、自分の責任で育てるべき。自分は、子どもはもういないものと思っているので、養育費は払う必要がない」という理屈を長々と手紙で送ってきたのです。しかし、暴言の録音があることなども含めて何度かやりとりすると、離婚に応じました。

ちなみにその間も、夫はSNSに、ジェンダー問題に理解があるかのようなコメントを投稿し続けていました。

こうして、A子さんは離婚することができました。

写真=iStock.com/Sayuri Inoue
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決して特殊なケースではない

皆さんは、A子さんの夫について、どのような印象を持ったでしょうか。

非常に特殊な性格の人と結婚してしまったように見えますが、実は「仕事に理解のある人だと思ったのに、結婚したら妻にばかり育児や金銭面の負担を押し付ける」という夫に関する相談は、ここ2、3年で急激に増えています。

A子さんのように、しっかりしていてバリバリ仕事をしている女性が、家では夫に冷たくされ、精神的、金銭的に追い詰められるというケースは、本当に多いのです。

その要因としてまず考えられるのは、社会全体の男女平等への意識の高まりです。「男女は平等にするべき」「女性は結婚しても仕事を続けるべき」という価値観が浸透してきて、男性の側も、実際にそうするべきだと考える人は着実に増えています。

しかし、結婚前は本心から「結婚しても仕事は続けていいよ」「家事は分担しよう」と言うものの、いざ結婚するとそれを実行できなくなってしまう人がいるのです。