出産準備で覚えた違和感

しかし、出産の準備を進めるうちに、A子さんは違和感を覚えるようになりました。夫は、出産にかかるお金をどうするかについて、何も言ってこないのです。また、A子さんの収入は産休・育休に入ると下がりますが、毎月の負担額をどうするかについても言及がありません。

「産休に入れば言ってくれるかも」と思いましたが、状況は変わりません。

出産に備えてベビー服やベビー用品を一緒に買いに行った時も、彼は会計の時に財布を出さないので、A子さんが支払います。

仕事を続けることを許してもらっているという引け目もあり、お金のことをはっきりと言い出せないまま、A子さんは出産しました。夫は立ち会ったものの、入院費用やオプションにかかるお金は、全てA子さんが負担しました。

子どもが生まれて豹変した夫

こうしてA子さん夫妻の育児が始まりました。保育園も見つかり、A子さんは時短勤務で復帰しました。

夫は、保育園の送り迎えなど、頼めば分担してくれます。しかし一番つらいのは、A子さんの金銭的な負担は増える一方なのに、夫が1円も負担を増やそうとしないことでした。

A子さんはフルタイムで働いていた時と同じ金額を家計に入れています。その上、子どもの食費や衣類、オムツ代などは全てA子さんが負担するので、給料では賄えなくなり、やがて貯金を取り崩すようになりました。

あれだけ理解のある人なのに、どうして何も言ってくれないのか。そのことがずっと気になっていたA子さんは、夫にさりげなく「毎月のお金の負担を少し減らしてもいいかな」「子どもにかかるお金も家計から出させてほしい」と言いました。

すると夫は「君が産みたいって言ったんじゃないか」と突き放しました。「君が頑張るからと言って産んだのに、こっちに負担を押し付けるの? 君が産んだのだから、君が払うのが平等だよね?」とたたみかけるように言われ、A子さんはがくぜんとしました。

それ以来、夫は何かと冷たく当たるようになりました。A子さんが仕事の愚痴を言うと「君が好きで働いてるんじゃないか、不満に感じるのはおかしいよ」と突き放し、A子さんが仕事と育児で疲れて寝ていると、「怠けないでよ、君が産みたいって言ったんでしょ」と乱暴に起こします。子どもが泣いても、自分はスマホを見ていて何もしません。離乳食も、子どもが食べるのを嫌がったらそのまま放置して何も食べさせないなど、あまり育児にも積極的ではありません。

何度か夫に、お金の相談をしようとしましたが、そのうち夫は声を荒らげて怒鳴るようになりました。「自分で稼いでいるくせに、俺から金をせびるのか」「何様のつもりだ」などと言われ、時には物を投げつけられます。