むしろやる気がマイナス要素になる

「自分は、やる気スイッチが入らないとやれないんだ」

こうした勝手な思い込みは、脳科学的な見地からいっても、脳が勝手につくり出している幻想にすぎません。そういった心構えでは、いつまでたっても何も始めることはできませんし、自分の限界を超えることもできません。

むしろやる気というのは、ときに仕事や勉強でチャレンジするためのマイナスになってしまうことさえあるのです。

私たちの仕事や勉強におけるパフォーマンスは、日々の努力や習慣によって成り立っています。そう考えれば、モビリティを高めるためのやる気という特別な感情は、脳自体は必要としていないということがよくわかるのではないでしょうか。

また、自分の限界を決めずに何か新しいことにチャレンジするというと、「これは自分にとっては大きなチャレンジなんだ」と身構えたり、意識しすぎたりしがちです。でも、それではチャレンジ自体が上手くいかなくなってしまうことが多いといえます。

ここで大事なのは、平常心を持ってひたすら動き続けること。それこそが運動IQを手に入れるということの本質でもあるのです。それは登山のように、平常心を保って入念に準備してから山に挑むことが、人を山頂に到達させるのと同じことなのです。

チャレンジの成功が次の成功を呼ぶ

「自分の限界を超えたチャレンジが成功した!」

そんなとき、脳が大きな喜びを感じて神経伝達物質であるドーパミンが分泌されます。人間の脳は、ある行動をとったあと、脳のなかでドーパミンが放出されると、その行動が強化されるという性質を持っています。それは、いままでの自分では成しえなかった新しいチャレンジに成功するといったことも同じです。

脳がこうした喜びを実感できると、ますますその行動をくり返したくなるというわけです。

たとえば、仕事が順調に進んでいるときや、勉強がはかどっているときに、脳のなかではこのドーパミンが分泌されています。しかも、このドーパミンが分泌されると、脳はことあるごとにその行動を再現しようとするので、快感を生み出す行動が次第に癖になり、次のチャレンジがより成功へと近づきます。

また、ドーパミンが多ければ多いほど、あなたの脳は喜びを感じているので、次第により難しいチャレンジを求めていく。それによって運動IQを手に入れることにつながる。これが、私たち人間が持っている一つの才能である、「脳の強化学習」というものです。