「安倍レガシー」の正しい継承方法とは

私は、保守派が今後、安倍氏の考え方を一つの模範として大事にしていき、その遺志を継ぐことを旗印に掲げることに異存があるわけでない。ただ、安倍氏の考え方の一部をつまみ食いして金科玉条にすべきでないし、安倍氏が国内外で、自分と違う考え方の人と妥協しつつ、うまく関係を築く達人だったことを引き継ぐことも、安倍レガシーを守ることだと認めるべきだと思う。

保守派の人はよく「安倍氏から直接こう聞いた」と言うが、中道リベラルの人には別の言い方をしていたことも多い。

私は安倍氏が「日本のドゴール」のような存在として扱われることを期待している。フランスのドゴール元大統領は、保守本流団結のシンボルであり、ドゴール派が強い保守政党として健在だ(現在の共和党)。

シャルル・ド・ゴール(1963年)(写真=CC-BY-SA-3.0-DE/Wikimedia Commons

その一方で、レジスタンスの英雄、第五共和国の創立者、米ソの狭間で独自外交を守った愛国者、欧州統合の基礎をつくった人などとして、フランス人に党派を超えて敬愛されている。

安倍氏の遺産は、保守派の人にとっても、幅広い国民にとってもそれぞれ遺産であるべきだし、それは相乗効果をもたらすと信じている。一部の保守派が排他的な形で独占しようとするようなことはあってはならないのだ。

安倍派は会長も決まらず迷走中だが、誰が率いるにせよ、その点は、派閥として明確にしておいたほうが良いだろう。

*本稿の内容の詳細は『安倍さんはなぜリベラルに憎まれたのか』(ワニブックス)、『日本の政治「解体新書」 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』 (小学館新書)に書いた。

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