卵巣では毎日次々に卵子が目覚めている

通常、ヒトの細胞の核の中にある染色体は23種類(常染色体22組+性染色体1組)のものが2本ずつあるので合計46本です。しかし生殖細胞は、受精すると相手の染色体と自分の染色体が合体するので、それぞれが46本の染色体を持っていたら受精卵の染色体が92本になってしまいます。そこで、生殖細胞は、あらかじめ自分の染色体の数を半分にしておく必要があるのです。

減数分裂は第1減数分裂と第2減数分裂の2期に分けられ、卵子は、休眠から目覚めると第1減数分裂の途中から成長を再開します。

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卵子が「目覚める」とは、休眠中は何もしていなかった遺伝子が、あるとき何かの理由で再稼働し、受精に向かって成長の工程を再開するということです。ちなみに、卵子の内側で進むこのような発生学的な変化は、不妊治療では「成熟」と表現されます。

卵巣の中で、一体どんな法則があって次に目覚める卵子の順番を決めているのかは、まだわかっていません。ただわかっているのは、卵巣では、月経周期の何日目であっても、毎日、次々にたくさんの卵子が目覚めているということです。

目覚めてから半年かけて排卵に至る

卵子の成熟が本当に完了するのは、精子が入って受精してからと考えられています。また、目覚めから排卵までの日数を見ると、なんと約半年もかかります。その過程の全体像と、各時期の大きさや名称を示したのが図表3です。

※『不妊治療を考えたら読む本最新版〉』(講談社ブルーバックス)より

ここで、「おや、保健体育の授業で習ったことと違う」と思った方もいるかもしれません。多くの方は、排卵の仕組みを教わったときに「卵子は、排卵する月経周期のはじめに『今月の卵子たち』が一斉に目覚めて競い合い、その中でもっともよいものが選ばれて排卵する」というイメージを持った方が多いのではないでしょうか。

それは、昔はごく小さな卵子のことがわからなかったので、そう教えるようになったのだと思います。現在では、卵子は排卵する周期の約6カ月も前から起きているし、決まった日に一斉に目覚めるわけでもないことがわかっています。

実際には、女性が月経周期の何日目にあろうとも、卵子たちは次々と目を覚ましていくのです。それをイメージとして示したのが、図表4です。

※『不妊治療を考えたら読む本最新版〉』(講談社ブルーバックス)より