なぜ卵子だけが40年も生きられるのか

年齢が高くなればほとんどの卵子は消えてしまうものの、中には40年間くらい卵巣の中で生き続け、元気な赤ちゃんになって生まれてくる卵子も存在します。この事実は、考えてみれば驚異的なことで、神秘的ですらあります。

ふつう細胞の寿命というものは、たかだか3カ月くらいしかありません。私たちの身体の約37兆個ある細胞たちは、ほとんどが3カ月単位で入れ替わっているのです。精子などは約80日でできて、10日間もすれば死滅し、白血球に食べられ吸収されてしまいます。

それなのに、なぜ卵子だけが40年間も生きられるのでしょうか。ここには「休眠している」という卵子の特性がかかわっているのでしょうし、おつきの細胞たちの活躍も大変なものなのでしょう。でも、そのメカニズムについてはまだ何もわかっていません。

遺伝子工学の概念
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卵子の成長の過程はどうなっているのか

卵子たちは、どのように休眠から目覚めて育ち始め、中途で消えたり、排卵に至ったりするのでしょうか。ここでは、卵子の成長を少し詳しく見ていきましょう。

卵巣を超音波で見ると卵胞がどんどん大きくなっていくのが見えますが、その時期の卵胞には、単に袋のサイズが大きくなるだけではない、さまざまな変化が起きています。

まず、卵子の核の中にある身体の設計図、染色体に注目してみましょう。

卵母細胞は、胎児期に作られて第1減数分裂の前期まで進み、そこで休眠状態に入り、そのまま貯蔵されていると説明しました。

減数分裂とは、細胞分裂の特別な形で、生殖細胞に特有なものです(図表2)。卵子、精子といった生殖細胞は、成熟するまでに、自分の染色体の本数を半分に減らさなければなりません。

【図表】生殖細胞の減数分裂の仕組み
※『不妊治療を考えたら読む本最新版〉』(講談社ブルーバックス)より