「なぜあのとき結婚しなかったんだろう」

なんとか笑顔を保ちつつ、その日はガヤガヤと賑やかなサイゼリヤで軽い食事をしたが、1時間ほどで限界を感じたM子さん。「気分が悪くなった」と伝えて帰宅した。

ちなみに飲食代金は遅刻したお詫びとして彼が出してくれたそうだ。

「2度目のデートがサイゼリヤなんて、大学生カップルのようで悲しくなりました。本当は注文せずにすぐ帰りたかったのですが、さすがにそれはできず……。でも、デートのお店も選べず、行き当たりばったりでサイゼリヤなんて、大切にされていないと感じました。もう彼には会いたくないと思い、彼からはその後一度メッセージをもらいましたが、返信していません。ひさしぶりに素敵な人に出会えたと思ったのですが、こんなことになって残念です。そして、またイチから婚活をやり直さなければいけないことにもぐったりで、なんだか疲れてしまいました……」(M子さん)

写真=iStock.com/Doucefleur
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M子さんはこうも言う。

「気づいたら42歳になっていて。想像ではとっくに結婚して子育てしているはずだったのに、なぜ私はいまだに婚活しているんでしょう。今さらながら、20代当時に熱烈プロポーズしてくれた人と結婚しなかった自分を悔いています」

若い頃にモテていろんな人とお付き合いしてきた人ほど、M子さんと同じく「なぜあのとき結婚しなかったのだろう」と今独身である自分を悔やんでいる人が少なくない。

わからなくはないが、この思考を生んでいるものこそが無自覚の自己否定なのだ。

40・50代の婚活市場では「エスコートの経験がない」男性が多数

では、実際にM子さんに起きたことはなんだったのか。M子さんの視点から一度離れ、事実を客観的に見ていこう。

今回の出来事
・マッチングアプリで出会った彼との1回目のデートが楽しかったから2度目の約束をした
・2度目のデートはサイゼリヤだった。

起きたのは、これだけだ。しかしM子さんはこう解釈した。

「私にはお店を予約してもらったり、雰囲気の良い店を選んでもらえる価値がないの? 大切にされていないと感じ悲しくなった」

大切にされていないと感じたこと自体は悪いことではない。感情は個々人が自由に持つもので、大事にしたほうがいい。しかし、自分の価値=レストランの価格帯と受け取るのはいささか極端すぎないだろうか。これこそが、自己否定の視点である。

そもそも、アラフォー・アラフィフ世代の女性は、自分でしっかりと稼ぎ、さまざまな趣味や学びなどを大事にしている人が多い。身体のメンテナンスや美容にも力を入れ、美しくあろうと努力している人もたくさんいる。食そのものや、場の雰囲気も、生活の上で大事にしているもののひとつだろう。

しかし、同じ40歳以上でも、婚活の場にいる男性でレストラン選びに長けている人は多くない。収入が高い=エスコートが得意なわけではなく、この市場だとむしろ少ないのが実情だ(離婚経験者であれば上手な場合もありうる)。

この違いをふまえた上で、考えられる理由はさまざまだ。

深い意味はなく、目についた「自分がよく知っている店」を指差しただけかもしれない。その場合、ただ知らないだけなので「~~のようなお店が好き」や「~~に行ってみたい」など、素直に望みを伝えればいい話であり、そんなに深刻に悩む事態ではない。

もしくは、仕事が忙しく、お店について考える余裕がなかった結果なのかもしれない。待たせては失礼だから、約束の時間に間に合うように仕事を終わらせよう! という精一杯の気持ちで来たのかもしれない。

そう考えると、2回目以降のデートを重ねてみれば、真面目に勤務していて、結婚相手として魅力的な人だったかもしれない。

客観的に見ると、彼が店とM子さんそのものの価値を結びつけたとは考えにくい