「からだと食べものをつなぐ発想」が大切

私は以前、進学校でインターハイを目指すハンドボール部の生徒とその保護者に栄養指導を行っていました。トレーニングをどんなにがんばっても、「食べる」ことを疎かにしていたらパフォーマンスは上がりません。トップアスリートほど、「いつ何を食べるか」ということを重要視しています。

特に、生徒に伝えたかったのは「からだと食べものをつなぐ発想」です。たとえば、「厳しいトレーニングの前日には、最後まで脚がもつように夕食はご飯で炭水化物を多めにとる」「練習中に足がつることが多いときは、おひたしにすりごまをたっぷりかけてミネラルを補給する」といったように食事で補うことが大切です。

ある日、こんなことがありました。生徒たちに「これまでのレクチャーの中で何を学びましたか」と聞いたところ、主将が真っ先に答えたのが「菓子パンはお菓子、夜勉はナッツ(アーモンド)!」でした。毎日の食事は私の栄養指導を参考にして保護者が作ってくれるから、心配はありません。問題は間食。生徒たちは、私のレクチャーで学んだことを頭に刻みつけて注意していたようです。

アーモンドは夜食やダイエットにもぴったり!

菓子パンはスナック菓子と同じで、これらに含まれている白い砂糖や油脂はカルシウムの大敵です。取りすぎると太ったり、判断が鈍る要因となります。一方、ナッツの中でも特にアーモンドは栄養素が豊富。硬めで噛む回数が増えるため、満腹中枢が刺激されて少量でも満腹感を得ることができます。ですから、夜食やダイエットにぴったりです。

生徒たちは放課後、部活でハードなトレーニングをこなし、そのあと塾に通い、さらに自宅で勉強していました。ですから、頭もからだも疲れ果て、さぞや眠かったはず。案の定、保護者に「夜食をお腹いっぱい食べたら1分で寝ちゃいませんか」と聞いたら、「いえいえ、1.5秒で寝ます」との答えが……。前述したようにアーモンドには、脳の情報伝達機能を高め、頭の中をすっきりさせるうえ、少量でも満腹感を得られる効果があります。彼らはアーモンドをつまみながら、睡魔と闘っていたのでしょう。

私が栄養指導で教えたことは、部の「栄養ノート」に書き残され、後輩たちに引き継がれています。生徒たちが考えたフレーズ「夜勉はナッツ!」も、そこに記されていることでしょう。やがて、ハンドボール部は強豪の仲間入りをし、私が管理栄養士としてサポートし始めてから13年目にインターハイ出場を果たしました。

今では彼らも、さまざまな分野の最前線で活躍するビジネスパーソンです。もしかしたら、当時のことを覚えていて、仕事で大事な決断をする前にアーモンドをつまんでいるかもしれませんね。

(構成=河合起季)
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