「障害者の将来のために貯金を」への違和感

「GAKUさんの絵は、障害者の経済的な自立につながっていますよね」

よく取材でこのことについて聞かれて、困ることがある。

というのも知的障害がある場合、障害者手帳を持っていれば障害年金が毎月振り込まれる。そして一生の間、生活介護というデイサービスや、グループホームといった福祉サービスのお世話になり、これらの施設利用には費用がかかるが、それらはその障害年金でちょうど賄える金額である。

時々「障害者の将来のために貯金を!」ということを聞くが、ボクは基本的には必要ないと考えている。少なくとも自力で生活できない知的障害者にとって、貯金はあまり意味をなさない。なぜなら自分の口座にお金があったところで、自らお金を管理して自分で物件を借りてひとり暮らしをするというようなことはしないからだ。

ただし親が亡くなったあとに、ある程度のお金は残してあげたいと思っている。というのも、障害年金があれば福祉施設を利用するのに困ることはないが、ちょっとしたお小遣いまでは出ないからだ。お出かけするにしても、好きなものを購入するにしても、月々数万円のお小遣いはほしいところだろう。

筆者提供
GAKUさん

親が亡くなったときのためのサービスを始めた

しかし、GAKUにたとえば一生分のお小遣い1000万円を貯金して渡したとしても、彼はそれを自分で管理することはできない。彼にキャッシュカードを持たせるわけにはいかないし、逆に第三者に使い込まれても困る。

そのため彼の将来を考えて、アイムパートナーズというサービスを始めた。

これは、終身保険を利用して、親が亡くなったら保険金を信託に入金するものだ。そして信託にまとまった金額が入金されると、親が生前に指定しておいた金額が毎月分割して本人に入金される仕組みだ。もちろんこのサービスは、全国のアイム以外の家族にも提供している。

知的障害がある子どもがいる場合、お金の心配はつきものだ。アイムは息子のニーズを満たすために、必要とするサービスを増やしてきた。結果的に、それらは他の家族にとっても役に立つことになる。