寺院葬ならではの葬式の良さとは
寺院葬では、葬儀会館では難しい演出も可能になる。葬儀会館は縦長の部屋が多い。構造上、参列者は祭壇に向かって、僧侶の背中をみているだけになる。しかし、本堂は横に広がる空間で、導師を囲むように席の配列ができる。そのため、儀式の様子が具さに観察できるのだ。
「例えば、遺体に剃刀を当てて、仏弟子になる作法など、その意味を教えてもらいながら、儀式を観察できるのも寺院葬のよいところでしょう。住職と参列者との間に一体感が生まれ、とても感動したという喪主さんは少なくないです」(堀下さん)
寺の本堂での葬儀の場合、花の祭壇は最小限で済み、コストが軽減できることも、大きなメリットだ。寺には本尊を中心とした荘厳な空間が整っているからだ。臨終後の儀式の場として、寺の本堂ほどふさわしい空間はない。また、地域の寺だと、近隣の人が集まりやすい利点がある。
てらそうそうの寺院葬を取り入れている寺が、埼玉県新座市にある蓮光寺(真言宗智山派)だ。蓮光寺は檀信徒以外でも寺院葬を受け入れる。本堂も比較的新しく、葬儀会館と同等の設備が整っている。
蓮光寺の上田昭憲住職は「葬儀の規模が小さくなってきている今だからこそ、寺と喪主とはより緊密な関係が求められると思って寺院葬を始めました。果たして住職が司会進行までできるのだろうか、との懸念を抱く寺院関係者も多いようですが、回忌法要は住職がひとりでやることがほとんど。葬儀から納骨まで、一対一で檀家さんと接するとコミュニケーションが深まることのメリットは大きいです。寺院葬をもっと広げていきたい」と話す。
西本さんは言う。
「お坊さんが近くにいてくれて心強く、安心したという施主さんの声は少なくないです。寺院を地域と社会に開かれたよりどころにしていくため、今後も寺院を裏方支援していきたい」
当面は、首都圏に限って参画寺院を募集するが、将来的には全国に寺院葬を広げていきたいという。