「見えない特性」に対する配慮が求められている

黒川医師は、次のように述べる。

「感覚鈍麻の特性のある人は、直射日光を浴び続けることによる暑さや喉の渇きに気づかないことで、体調不良になってしまう場合もあります。学校など集団生活の場では、サングラスをかける、カーテンを引いて遮光する、陽の当たらない席の人と替わるなど、感覚特性のある人への配慮を行い、だれもが無理なく過ごせる環境を作ることが必要です」

加藤路瑛『カビンくんとドンマちゃん 感覚過敏と感覚鈍麻の感じ方』(ワニブックス)

つまり、社会人であるKさんは、自ら日光を避けるべく「ロールカーテンを下ろす」ことができたが、学生の加藤さんの(教室の)ケースでは、それができなかった……。そう、いま、教育機関を筆頭に“見えない特性に対する、環境面での配慮”が、必要とされているのだ。

たとえば、視力が弱く、黒板の字がよく見えない子に対して「見えないのは甘え。がんばって見なさい!」という人はいないだろう。ところが、感覚の特性が原因で決まった行動が取れない子に対しては「みんなできているのに、あなたはなぜできないの! きちんとしなさい!」という指導が行われたり、「あの子はわがまま」といった目でみられることが、しばしばある。

「足並みをそろえる社会」からの卒業を

本来、すべての人は不便を感じることなく、日常生活を平等に過ごす権利を持っているはず。黒川医師の話にもあった通り、視覚過敏で光の反射が眩しいのであれば、教室内でもサングラスを着用したり、聴覚過敏があればイヤーマフをつけるといったことが――メガネをかけるのと同じように――本人の必要に応じてできる環境をつくるべきなのだ。

とくに学校などの教育現場では、これまで「みな同じ」「足並みをそろえる」ことがよしとされてきた。しかし、これからは多様な“個性”を受け入れることが課題となってくるだろう。そう、どんな特性を持つ人であっても、誰もが不自由や不便を感じないよう、違いに配慮する社会を作ることが、いま、求められているのである。

(文=国実マヤコ)
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