「感覚鈍麻」という感覚特性を持つ人たちは、酷暑でも暑さを感じず、足を骨折しても痛みを感じない。その当事者たちの苦しみは、あまり知られていない。『カビンくんとドンマちゃん 感覚過敏と感覚鈍麻の感じ方』(ワニブックス)の著者・加藤路瑛さんは「特に自分の困りごとをうまく伝えられない子どもたちは、周囲のサポートが不可欠だ」という――。(第1回/全2回)
暑さや寒さ、体調変化に気づきにくい「感覚鈍麻」
ハアハアと肩で息をするAさん。「Aさん、大丈夫?」何事かと声をかけるも、振り返った彼女の顔を見て驚いた。顔は真っ赤、しかも汗も大量にかいている。
「Aさん、暑いんじゃないですか?」「え? あ、そうかも」……。
Aさんは「感覚鈍麻」とよばれる感覚特性を持つ一人だ。感覚鈍麻を持つ人は、暑さや寒さ、あるいは体調変化などに疎い。たとえばAさんの場合、夏場でも喉が渇いていることに気づかず、水を飲んで初めて「あ、喉が渇いていたのか」と気づくことも多いのだという。何度も倒れかけた経験を持つAさんは、今ではあらかじめ時間を決めて、なかば強制的に水を飲むようにしているそうだ。
「気づいたら、脱水症状や熱中症になっていた」
感覚過敏の当事者で「感覚過敏研究所」所長を務める現役高校生・加藤路瑛さんは、この「感覚鈍麻」についての調査として、自身が運営する感覚過敏の人のためのコミュニティ「かびんの森」にて、アンケートを実施した。下記のコメントは、このアンケートに寄せられた、感覚鈍麻を持つ当事者たちの声である。
・「(真夏に)外に出ても暑さを感じないため、気づいたら脱水症状や熱中症になっています」(17歳・女)
・「寒いという感覚がよくわからず、天気予報や周囲に合わせた格好をすると暑くてしんどい。真冬でも薄手の長袖Tシャツ1枚くらいがちょうどいい」(年齢性別・無回答)。
・「熱い皿など、他の人が熱くて触らないものを触れ、あとで皮膚が赤く腫れたりする」(年齢性別・無回答)。