「あの子が轢かれた!」
第一戦は、こうして何とか終わりました。ここからが、支援のスタートです。
とにかく、家や学校やたまり場に足を運び、祖父や母ともこまめに連絡を取りながら、関係を深めます。「来なかった」と言われないように、近くを別件で通ったときにも意識して立ち寄ったものです。
そんな中、本当の意味でこのお母さんと繋がれる出来事がありました。
この子が中学校に入学する前の小学6年生最後の春休みに、バイクで事故を起こし、大けがをして救急車で運ばれるという事故がおこったのです。
しかもあろうことか、相手の車は、轢いた時に見たら子どもだったので、「お前、無免許やろう。バイクになんか乗って。お前が悪いんだから俺は知らない」と言って逃げたのだそうです。
お母さんから泣きながら電話がかかってきて、「堀井さん! あの子が轢かれた!」「今、救急車で○○病院に運ばれて、どうしたらいいか分からん」と言うのです。
母のマスカラが涙で滲んでいた
とにかく病院に行こう、私もすぐ行くよと言って、お母さんをなだめ、一緒に病院へ行きました。
母のマスカラが涙で滲んでいました。そこに母の愛情と心配がこもっていて、私は何だか安心しました。
こうしてパニック状態のときに、困ったときに顔が浮かぶ関係が、支援者と相談者の真の信頼関係です。
しかし、ハヤトの非行問題はすぐには収まりませんでした。