がん細胞の増殖は「免疫」で防げる

みなさんもご存じのとおり、免疫とは細菌やウイルスなどの異物が体に侵入するのを防いだり、攻撃して排除したりする能力のことです。

私たちの体内では、ウイルスや紫外線、それ以上に加齢によってDNAのミスコピーが起こり、できそこないの細胞がつくられ、その一部ががん細胞となって増殖していくわけです。これらを、ごく小さなうちに排除しているのが免疫です。

免疫学の専門家に聞くと、がん細胞の増殖が始まっても、100個とか1000個といった数なら免疫によってやっつけることができるのだそうです。これがミクロン(1000分の1ミリ)単位の微小ながんの段階です。

人間は誰しも、このくらいの目に見えないがんを体内に持っているのですが、免疫が働くことで大きながんにならずに防いでいるわけです。

がんが1〜2センチメートルの大きさになると、健康診断などで見つかるようになります。発見されるがんとしては小さなサイズですが、こうなるとがん細胞は数千万〜兆の単位になっているので、免疫ではがん細胞をやっつけることができません。手術などでがん細胞を切除するしかないのです(がんを取り去ったほうがいいとはかぎらないという問題もあるのですが)。

写真=iStock.com/takasuu
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免疫細胞にはコレステロールが欠かせない

がんの種類にもよりますが、できそこないの細胞ががん細胞として増殖し、発見できる数センチメートルの大きさになるまでには、数年から10年以上の時間がかかります。したがって、がん検診で初期のがんが見つかったという場合、何年も前に免疫機能がとり逃したがん細胞が増殖したと考えられます。

和田秀樹『頭がいい人、悪い人の健康法』(PHP研究所)

免疫の活性は、さまざまな原因で高まったり弱くなったりしますが、何らかの原因で、免疫の活性が下がった状態が続いていたのかもしれません。免疫細胞に必須であるコレステロールの不足も、免疫機能が低調となる原因の一つとなります。

こうしたことから、心疾患で死ぬ人が多い国は、コレステロール値を低めにしておいたほうがいいのです。逆に、がんで死ぬ人が多い国は、コレステロール値をむしろ高めにしておいたほうがいいといえます。

免疫機能が活性化していれば、新型コロナや肺炎といった感染症にもかかりにくくなるうえ、がん化する細胞もかなりの確率で排除されます。がんで死ぬ国・日本では、まず免疫力を保つことを、「頭がいい人」の基本的な健康法として覚えておきましょう。

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