環境省と経済産業省の対立は必然だった

環境省は、これまで環境庁が行ってきた仕事を引き継いだうえに、厚生省の所管だった廃棄物リサイクル対策などを引き受けることになった。また、大気汚染などの公害防止のための規制、監視測定、公害健康被害者の補償などを一元的に担当していくことになった。しかし、地球温暖化対策は他省庁と連携して行っていくとされたに過ぎなかった。

そのため、地球温暖化対策の要となる再エネ促進などのエネルギー対策は、経済産業省と対立することになった。環境省は、「京都議定書」の提言を重視して脱炭素を進めたい。しかし、経済産業省は財界をバックに、エネルギーの安定供給を最優先とした。これでは、対立しないわけがない。

環境省と経済産業省の対立の最大の焦点は、カーボンプライシングの一つ「排出量取引」だった。2007年、「排出量取引」導入を目指す環境省と、それに反対の経済産業省の対立が表面化したことがあった。環境省の田村義雄事務次官(当時)が「排出量取引はGHG削減の有効な選択肢の一つ」と導入をほのめかすと、即座に「日本では財界による自主行動計画方式が最適」と、経済産業省の北畑隆生事務次官(当時)が牽制けんせいしたのだ。

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2015年、カーボンニュートラルが義務化

当時、排出量取引制度を義務化することに、財界は反対しており、「賛同企業の自主的な対応に任せる」というのが、財界の方針だった。それを経済産業省が代弁したのである。さらに、財界は「炭素税」の導入にも反対した。そのため、経済産業省は、この点でも環境省と対立した。

この対立は、いまもなお続いている。岸田内閣が成立させた「GX推進法案」で、カーボンプライシングの本格的実施が2030年以降に先送りされたのも、そのためである。

地球温暖化は、なんとしても止めなければならない。この点で世界各国が合意し、枠組みが成立したのは、2015年の「COP21」で、このとき結ばれたのが「パリ協定」である。

「パリ協定」の第4条は、世界各国に気候変動対策の行動計画を中心にまとめた「NDC」(Nationally Determined Contribution:国家が決定する貢献)を要請している。つまり、この後は、GHGの排出削減、カーボンニュートラルが各国の義務となったのである。