それとともに、第二に、研究スタイルも次第に変化する。それまでは、文献研究か、商業統計や有価証券報告書といった二次資料を用いた統計分析、あるいは経営者に向けた質問票調査くらいしかなかった研究レパートリーに、「現場の当事者の視点から、現場を深く知る」という研究スタイルが加わった。具体的にはインタビュー調査や観察調査、方法として言えば社会構築主義がそれだ。具体的な経営の現実を、どのように理解するかに研究者の力が移ってきた。
教育と研究における変化に加え、第三に、「その理論あるいはケースが、自分たちの人生や社会や組織に役に立つか立たないか?」の視点、つまり「実践の視点」が入ってきたことが大きい。「役に立つ」といっても、企業の意思決定への役立ちに狭く限定する必要はない。社会にでも、自分の人生にでもいい。いずれにしろ、先生が理論を説明しても、「それは、いったい、私たちに何の意味があるのか」という設問がぶつけられるようになった。偉い先生の理論かどうかや、その理論がいかに精緻でエレガントであるかは関係なく、その理論が現実において、どのような意味を持つのかが問われ始めた。日本の社会科学の教室に、プラグマティズムの姿勢が入ってきたのだ。それは、教室の古くからある秩序を破壊し、新しい秩序の構築を促す。以上の議論を整理すると、図のようになる。