「安心」と「安全」の両立は難しい

言葉のもともとの意味としては、secureに近いのかもしれないけれども、「安心」は、お気持ちを示す以上、「安全」が示す仕組みの問題ではない。

「安心安全に利用できる」と、簡単に両立するものではない。

「安全」を確立するのはシステムを整えれば何とかなるし、どこかで終わりがある。しかし、「安心」には、どこまでも終わりがなく、納得するまで続く。

ただでさえ他国に比べて少ない数にとどまる日本の公務員が提供できるのは、せいぜい「安全」が精いっぱいではないか。

それなのに、「安心」なる、目には見えない、心の満足までをも、公務員に求める。救急隊員が食事をする姿を見るのは「安心」できないし、公務員の給与を削らないと、財政赤字問題も「安心」できない。

本来なら制度を整えて「安全」の提供に専念すべき公務員に対して、「安心」のほうを強く求める。

そんな社会では、ますます「安心」が不足しているという不全感や不満ばかりが高まり、よりいっそう「公務員の人員を削減」すると叫ぶ政党への支持が集まるいっぽうなのだろうか。

(*1)さいたま市消防局、2022年7月26日11時09分
(*2)「救急隊に食事時間を! さいたま市消防局がSNSで異例の呼びかけ」NHKさいたま放送局、2022年8月3日配信
(*3)「財政問題について経済学者と国民の意識はどう乖離するのか『経済学者及び国民全般を対象とした経済・財政についてのアンケート調査』の紹介」東京財団政策研究所、2023年5月15日発表
(*4)「民間の平均年収『508万円』だが…『公務員』の老後安泰な給与額」幻冬舎ゴールドオンライン、2023年6月15日配信
(*5)「令和4年大阪府内市町村(政令指定都市を除く)のラスパイレス指数の状況」大阪府、2022年12月26日更新
(*6)「UTokyo Biblio Plaza 東京大学教員の著作を著者自らが語る広場」東京大学、2016年
(*7)不破雷蔵「日本の公務員は多いのか少ないのか、その実情を国際比較でさぐる(2022年時点最新版)」Yahoo!ニュース、2022年1月23日更新
(*8)「日本維新の会 政策#03
(*9)「財政問題について経済学者と国民の意識はどう乖離するのか『経済学者及び国民全般を対象とした経済・財政についてのアンケート調査』の紹介」東京財団政策研究所、2023年5月15日発表
(*10)「コンビニで『マイナカード』活用へ デジタル庁が協定締結」日テレNEWS、2023年6月27日18時54分配信

関連記事
このままでは「マイナンバーカード」が次々に失効していく…政府が"保険証廃止"を強引に進める本当の理由
帰宅が遅い子供に「何時だと思ってるんだ」は三流、「黙る」は二流、では一流の伝え方とは?
「精神科医が見ればすぐにわかる」"毒親"ぶりが表れる診察室での"ある様子"
中2で「初めてのセックスはどんな状況か」を考えさせる…日本と全然違うカナダの性教育
なぜ皇室に1男2女をもたらした「良妻賢母」が嫌われるのか…紀子さまを攻撃する人たちの"本音"