ストレスと睡眠障害は学校現場でも
まさに、試験やプレゼン、そのほか重要だからこそストレスをともなう可能性のある場面の前には、十分な睡眠の確保がいつにも増して大切になるのだ。
そのように考えると、睡眠障害を抱える人がストレス状況下においても記憶力を維持できるよう、社会の変化を起こすときにきているのではないだろうか。
彼らの睡眠不足を補える支援策としては、たとえば「授業開始時間を遅らせる」「就業時間に柔軟性をもたせる」などが考えられる。
睡眠の乱れや、睡眠不足は、往々にして学業成績の低下につながる。
睡眠と学力の関係を探る研究は数多く存在するが、その中のひとつが、著者ベネディクトが研究チームとともにウプサラ市の2万人以上の生徒を対象に実施した健康とライフスタイルに関する調査だ。
とくに睡眠と学業成績について調べたところ、睡眠障害や短時間睡眠と成績の低下に明らかな関連が認められた。
その結果は専門誌『睡眠医学』にも発表されているが、夜間の睡眠が不足する生徒たちは、授業中の集中力に欠け、知識を吸収する能力も低く、質のよい睡眠が促す学習内容の長期記憶への定着も旗色が悪かった。
17~18歳の80%が夜間のスマホをやめられない
この傾向は女子においてとくに顕著だった。学力試験の不合格者数を見ると、寝不足(本調査では7時間未満)の女子は適切な睡眠習慣の女子よりも2倍、睡眠が平日・週末ともに7時間未満の女子では5倍も多い。
だが同調査で得られたデータで最も心配なのは、全調査対象者の3分の1にあたる生徒が「睡眠障害で悩んでいる」または「睡眠不足である」と回答したことだ。生徒たちが本来眠るべき時間帯にインターネットに夢中になっていることが、この睡眠問題の原因のひとつではないかと考えられる。
18万人の児童やティーンエイジャーを対象に実施されたオーストラリアの調査では、7~8歳の子どもたちの4分の1が夜の間に1回以上スマホを使用すると回答している。
17~18歳の間では、その数なんと80%。これらの端末の画面から発せられるブルーライトの影響で、入眠の準備をうながすホルモン・メラトニンの分泌に遅れが生じる。
ソーシャルネットワークへのアクセスも、子どもたちの睡眠に重大な影響を及ぼしているだろう。