※本稿は、クリスティアン・ベネディクト、ミンナ・トゥーンベリエル『熟睡者』(サンマーク出版)の第5章「眠って『賢者』になる 眠ったほうが知識が残る」の一部を再編集したものです。
勉強ができる人とできない人は、何が違う?
過去:試験前日は夜遅くまで勉強し、朝7時になんとかベッドから這い出した。一日中あくびが止まらず、試験では前の夜に覚えたはずの内容をまったく思い出せなかった。大学からの帰り道では、あまりの眠さに危うく事故に遭いそうになった。帰宅後は、スマホを片手に何時間もソファの上で過ごした。
現在:夜は早めにベッドに入り、朝は爽快な気分で目覚める。試験では、前日に学んだことを事細かに思い出せる。大学からの帰り道には、フィットネスクラブに立ち寄る。帰宅後も数時間かけ、予定されているレポート発表の準備を怠らない。
今や、夜を徹して知識を詰め込んでも何の役にも立たないことがわかっている。効率的かつ迅速に学びたいなら、逆に眠ったほうがいい。睡眠は記憶の形成に最も効果的なツールだ。
私たちが衝動的な行動をとったり、何かにつけて物事を先延ばししないように自制心を保てるのも睡眠のおかげである。質のよい睡眠を確保することはすなわち、知識と成功のための前提条件を整えることなのだ。
睡眠中に脳に「空きスペース」ができる
覚醒時、脳はフル回転している。学校で、職場で、料理をしているときでもそうだ。友人と会っている間、子どもと遊んでいる時間、請求書の支払いをすませるとき、あらゆる活動で脳は全力を出すことを求められている。
そのため、脳は多くのエネルギーを必要とする。なにしろ、日中に収集したありとあらゆる情報のために、脳内に新たなシナプス(神経細胞の接合)が生み出されるのだ。1日が終わる頃には、脳は疲れきっている。翌日のために欠かせないパワーを蓄えるには、夜に休息をとらなければならない。
脳は夜の間、次の日に必要となる空き容量を十分に確保するために、新たに形成された神経細胞の接合の大部分を除去していく。脳内のこの清掃プロセスは「シナプスのダウンスケーリング」と呼ばれている。
何日も繰り返し練習した英単語など、脳が重要とみなす接合だけが削除されずに残る。これらのつながりを、脳は記憶に深く固定していく。その一方で、トレーニングのあとにランニングシューズを置いた場所や、子どもの遠足費用がいくらかといった、生存のために重要とはいえない大半の情報は再び消されることになる。