暗記を「長期記憶」として保存するには
睡眠中の記憶定着機能を最大化するためには、どのような行動をとるのが理想だろうか。
次の日に試験があるからといって、深夜遅くまで詰め込み勉強をするのは、とても賢明とはいえない。脳が一時的な情報で溢れかえってしまい、おまけに睡眠が短いために、情報をふるいにかけ、価値あるものだけを長期記憶に保存する機会が与えられない。
その結果、試験中、脳内は混乱を極め、数多の脳回(大脳皮質のしわの隆起部分)の中から正しい情報が格納された記憶の引き出しを見つけ出すのが非常に難しくなる。
ベストの方法は(物事を先延ばしするのが得意な人にとっては悪いニュースだが)、試験の数日前から少しずつ繰り返し勉強すること、そして学んだことを保存し、不要な情報を整理するために学習後に深い睡眠をたっぷりとることだ。
そうすれば、長期記憶が構築され、試験で好成績を収める可能性が高まるだろう。
ウプサラ大学の調査では、ストレス状況下で睡眠が不足すると記憶力の低下を招くことを突き止めている。調査ではメモリーカードを用い、それぞれのペアがどこに置かれているかを記憶するという手法で学生グループに記憶テストを受けてもらった。その日の夜、被験者は睡眠を4時間だけとることが許された。
ストレス+寝不足は大敵
同じ被験者たちは後日、再度メモリーカードのペアの位置を覚え、この日の夜には8時間の睡眠をとった。それぞれの実験の翌日、参加者にカードの置かれている場所をたずねたところ、その結果に睡眠時間の違いに起因する有意な差は見られなかった。おそらく、事実と空間に関する記憶が、おもに睡眠の前半に発生する深い睡眠時に固定されるためだろう。
つまり、これらの記憶の定着は4時間あれば足りるように見受けられる。
次に、試験や仕事でよく見られるストレス状況が記憶のパフォーマンスにどのような影響を及ぼすかを検証した。
被験者たちにはまず、騒音により集中力が阻害される環境下で大量の単語を暗記する課題が与えられた。そして、そのあとにもう一度記憶テストを行った。前日に覚えたメモリーカードのペアの場所を思い出してもらったのだ。
今回、4時間の睡眠でストレスの多い状況を経験した被験者たちは、どこにカードが置かれているかを前回ほど順調に思い出せなかった。記憶能力が10%低下したのだ。その一方で、きちんと睡眠をとったあとでは、ストレスによる影響は認められなかった。実験参加者たちは、前回と同様にカードの位置をよく覚えていた。
記憶力の低下は、睡眠不足のあとに決まって起こるわけではないが、ストレスと睡眠不足が組み合わさったときにはマイナスの影響が不可避といえる。