「将来もモノを買い続けられるという前提が崩れた以上、それを補う新しい幸福の物語が必要です。私は3つの物語が台頭すると考えていますが、とくに注目しているのは人間関係の中にある物語です。調査にも表れたように、たとえ収入が低くても、家族や友人をつくり、その中で存在を認められれば、幸福を感じます。そこで欠かせないのがコミュニケーション能力。コミュニケーション能力はビジネスでも必要ですが、幸福になる能力として、今後さらに重要性が増すはずです」(袖川氏)
今回の調査からわかったように、もともと上流はコミュニケーション能力が高く、下流は対人関係を苦手とする傾向がある。上流は仮に年収が減ることがあっても、人間関係という保険がある。一方、下流は年収と人間関係の両方が危うい。上流と下流の幸福感格差は、今後ますます開いていくのかもしれない。
※すべて雑誌掲載当時
(左)電通 ソーシャル・プランニング局プランニングディレクター 袖川芳之●1963年生まれ。京都大学法学部卒業。マーケティングを専門領域とし、電通総研主任研究員、内閣府経済社会総合研究所企画官などを歴任。