また、上流でも不幸な人は人間関係よりもお金にこだわる傾向にあり、下流でも幸福な人はお金よりも人間関係を重視する結果も出た(図33)。所得にかかわらず、その人の幸福感を決定する重要な要素は、お金以上に家族を含めた周囲との人間関係のようだ。

そのほか、上流でも不幸と答えた人は自らのことを「下流」と見なし、現状に不満が多く将来も悲観している。下流でも幸福と考える人が、全く逆の傾向にあったことを考えると興味深い結果と言えるだろう。現状や将来を悲観しないことが幸福感に直結している、という結果になった。また、信仰のある人のほうが幸福という結果も出ている(図34)。

幸福になる“物語”とは

以上の分析から、お金さえあれば必ず幸せになれるわけではなく、むしろお金がなくてもそれなりの幸福感を得られることがわかった。

袖川芳之氏は、ゼロ成長時代に対応した新しい幸福の物語として、(1)自分を究める物語(こだわりのある分野にお金を使い、自分の成長物語を追求する)、(2)社会に貢献するという物語(社会に貢献することで、自分の生きる意味や手ごたえを見つける)、(3)人間関係の中にある物語(人間関係の中に自分の居場所を確保する)の3つを挙げている。