ロシアと中国の戦略的関心はどこにあるか

ただし、この点についてはもう少し考察が必要であろう。米国と中国、ロシアの関係悪化により、「大国間の競争」が復活したと考えられているからである。これは冷戦期のように、様々な地域的な紛争要因をグローバルな大国間の対立にリンクさせることはないであろうか。

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この点でポイントになるのは、中国やロシアがどれくらいグローバルな安全保障に関与するか、である。冷戦期のソ連は、植民地独立の民族解放闘争を支援するという形で、ベトナム戦争をはじめとするいくつもの紛争にかかわっていた。その範囲はソ連周辺に留まらず、ヨーロッパどころかグローバルに広がっていた。そのため、同じようにグローバルな規模で共産主義を封じ込めようとする米国と世界中で対立し、その結果、それぞれの地域の紛争要因が米ソの全面核戦争とリンクする潜在的な危険性を持っていた。

一方、現在の中国は、核戦力および通常戦力の近代化を急激に進めているが、その戦略的な関心は台湾を中心とする東アジアに集中しており、それ以外の地域への安全保障上の関与は限定的である。一帯一路や太平洋島嶼部など、東アジア域外に影響力を広げようとしているが、軍事的なプレゼンスはきわめて小さい。ここから、台湾海峡有事が万一起こったとすれば、米中の核戦争へとエスカレートする危険はあるが、アジア以外の地域の紛争においてはそういったリスクはほとんどないと言える。

中国の核戦力は2035年には3倍以上になる

そもそも2023年現在の中国の戦略核戦力の規模は400発程度とみられ、仮に米中の全面核戦争になったとしても冷戦期のソ連ほど大規模な核攻撃を行うことはできない。ただこの点については、2035年には1500発の弾頭を保有するようになるという見方もあり、将来的には、少なくともロシアと同規模の核攻撃を行う力を持つ可能性はある。

ロシアは、引き続き大規模な核戦力を保有しており、比喩的に言えば、人類を滅亡させる可能性のある核戦争が米国との間で発生するリスクは引き続き存在している。特に、2022年のロシアのウクライナ侵攻以降、ロシアがしばしば核恫喝を行っていることから、核戦争のリスクが極めて深刻に懸念されている状況でもある。ただし、それ以外の地域で、ロシアが核戦争のリスクを冒して米国と対立する判断を行うとは考えにくい。