半分以上が「保険適用されたら分娩をやめる」

今年4~5月に行われた産科医療機関の経営者に対するアンケート調査の結果(90の医療機関が回答)を見ると、出産費用が保険適用されても、これまで通り分娩を継続すると答えた医療機関は46%にとどまり、半分以上の医療機関は「分娩を取りやめることを考えている」もしくは「保険点数がいくらかによって決める」と回答している。

スペシャリスト・ドクターズのアンケート調査より(全国の産科医療機関の経営者を対象としたWeb調査、有効回答数90施設、調査期間:2023年4月5日から5月28日)

少子化を食い止めるには、出産に関わる経済的な不安を取り除くだけでは不十分で、近くに分娩をやってくれる信頼できる産科医療機関があることが必要不可欠である。そうでなくても、産科は24時間体制で妊婦さんのケアをしなくてはいけない重労働の環境である。出産費用の保険適用で、産科医療機関にこれ以上負担を強いることは、日本の産科医療の崩壊を招きかねない。高リスクな政策だと言わざるを得ない。

もちろん出産費用に保険適用されても、医療機関に支払われる金額(保険点数)が今以上に高く設定されれば産科医療機関への悪影響はないと考えられる。しかし診療報酬の改定率は歴史的に見ても-3.16%~+0.2%程度であり、出産費用の自然増である年1%よりもずっと低い。保険収載された後に、出産費用のみが優遇されて今まで通りの伸びが維持されるとは考えにくいだろう。