米CW系列ロサンゼルス局のKTLAはディズニーランド・リゾートと、フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート(WDW)の待ち時間を記録するウェブサイト「WDW Stats」のデータを取り上げている。2022年の平均待ち時間は、無償のファストパスが存在した2019年と比較して20%延びたという。
ロサンゼルス・タイムズ紙に寄稿したマーテンス氏は、「ディズニーランドに入園することは、無料プレイのモバイルゲームをインストールするのと似たようなものになってしまった」と例える。「なんとかやっていくことはできるが、いずれ『コインがなくなりました』との通知が届く」
無料のファストパスでも十分なメリットがあった
ファストパスは無償で配布してもパーク側にメリットをもたらす制度設計となっており、有償化の必然性は薄い。無料配布でもパーク運営上の利点を生む理由は3つある。
1点目に、ファストパスを利用したゲストは、より多くのお金をパークに落とすことにつながる。ゲストが1時間も2時間も待ち列に並んだ場合、いくら喉が渇こうとお腹が減ろうと、飲み物や食べ物を買うことはできない。列から解放されることでゲストはパーク内を散策し、喜んでレストランやショップに立ち寄る。
2点目として、アトラクションを増やすことなく、パーク全体の平均の待ち時間を低減することができる。閑散期には、アトラクションの中には待ち時間が最短の5分表示(ホーンテッド・マンションでは不吉な数字に由来して13分表示)となることがある。実際は待ち時間がなく、空席のままライドを送っている場合が多い。
ファストバスを確保した来場者は、空き時間を利用して空いているアトラクションに向かうことができる。これによりパーク全体としてアトラクションの運営効果が高まる。ファストパスを発券した際、無料でおまけのパスが付いてくることがあったが、これも空いているアトラクションへの誘導を意図したものだ。
最後に、人気の高いファストパス対象アトラクション自体にも、ピーク時間帯を分散する効果が生まれる。ファストパスの券面に指定された時間通りにゲストが戻ってくるためだ。
ファストパスは、来場者の行動をコントロールすることを企図したものであり、料金を取らずとも運営側にメリットを生むシステムだ。「ファストパスの有料化」は、来場者がメリットを感じられない仕組みと言えるだろう。