アメリカでは、過剰な営利を追求する現行システムに反省の声も上がっている。ロサンゼルス・タイムズ紙は、米ディズニーのCEOに昨年11月に復職したボブ・アイガー氏の発言を報じている。

「ディズニーは手の届きやすいブランドでなければならないと、常に考えてきました。そして、利益を伸ばすことに情熱を傾けるあまり、私たちは一部価格設定について、少し野心的になりすぎていたかもしれません」

米ディズニーは今年9月、体験型高級ホテル「Star Wars: Galactic Starcruiser」(いわゆるスター・ウォーズホテル)を閉鎖する。2人1泊約4809ドル(約68万円)からという料金設定が話題になったが、1年半で幕引きとなった。SFゲートは、ディズニーの「魔法の喪失」を招いたとの批判があったと振り返る。

人々の手の届くテーマパークであるべきだと信じるアイガー氏の復職により、米パークは安心して楽しめるもとの場所にゆっくりと戻ってゆくのかもしれない。

入園者数より「1人当たり利益」を重視する方針に

一方、日本のパークでは高価格路線が今後も進んでいくことが予想される。

コロナ禍では、開園以来ほぼ一貫して延びてきた入場者数が前年を割り込んだものの、1人当たり支出額は増加した。運営母体のオリエンタルランドが公表しているIR資料によると、1人当たり合計支出額(チケット・物販・飲食)は、2019年まで1万1000円台で、ほぼ横ばいの状態が続いていた。入場者数を制限した2020年から増加し、1万5000円台まで伸びている。

オリエンタルランドは、入場者数の追求から目標を切り替え、来場者1人当たりの利益を伸ばす方針を示している。日経新聞は昨年6月、オリエンタルランドの椎葉亮太郎執行役員の発言を伝えている。コロナ禍で入園者を抑制したところ、アトラクションを効率よく回れたとのポジティブな反応が来園者から寄せられるようになり、「運営方針を転換する大きなきっかけになった」という。

今後も、入園者数をコロナ前の8割程度に抑えながら、1人当たりの利益を高めることで収益を確保する方針のようだ。ランドではすでに今年4月、新たに昼のパレード「ディズニー・ハーモニー・イン・カラー」に有料席が設定。シーでは昨年スタートした夜のハーバーショー「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」で一部鑑賞エリアが有料化されている。

東京ディズニーランドで行われたプレスプレビューで、新パレード「ハーモニー・イン・カラー」に見入る来場者たち=2023年4月10日
写真=EPA/時事通信フォト
東京ディズニーランドで行われたプレスプレビューで、新パレード「ハーモニー・イン・カラー」に見入る来場者たち=2023年4月10日