「持ち運べるリチウムイオンバッテリー」がある

EM1 e:を語る上で要となるのが持ち運び可能で、自宅でも充電可能な2次バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」(前身は2017年に発表された「Honda Mobile Power Pack」)だ。

着脱可能な「持ち運べるリチウムイオンバッテリー」として再生可能エネルギーを利用して発電した電気を蓄えて、小型の電動モビリティや家庭での使用を目的に開発された。じつにホンダらしいアイデア商品である。

筆者撮影
2次バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を取り付けた状態

Honda Mobile Power Pack e:はEM1 e:だけでなく、前述したPCX ELECTRICやBENLY e:シリーズ、GYRO e:シリーズでも使用可能。2022年には、コマツのマイクロショベル「PC01E-1」にも使われている。

ホンダの資料によるとHonda Mobile Power Pack e:は、定格容量26.1Ah、定格電力量1.314kWh、重量10.3kg(資料によっては10.2kg)とある。家庭で充電できて、小型で持ち運べるサイズや重さにこだわった。

Honda Mobile Power Pack e:では、交換する/共有するという発想からCN化社会へのサポートを目指すという。交換/共有すれば充電時間から解放されるし、交換場所をたくさんつくれば航続距離の不安もなくなるという考え方だ。さらに、バッテリーの規格を統一すれば大量生産でコストを下げることもできるし、マイクロショベルのように、のりものに限らず活用範囲はグッと拡大する。

「利益を再優先順位から落として価格を引き下げた」

「電動化は価格がネックです。とくに安価であることが求められる二輪車ではそれが大きな課題でした。EM1 e:は正直、利益を最優先順位から落とし、実質的に原付1種スクーターが購入できる価格帯にまで引き下げました」と語るのは、ホンダモーターサイクルジャパン営業部部長の石見氏だ。

かねてホンダは「普及させたいなら最初は赤字でやる」という路線を貫き、これまでもスクーターやバイク、四輪車を普及させてきた。BEVは高価格でゆえに普及には補助金が頼りといわれるが、EM1 e:は補助金がなくても十分魅力的。交換/共有できるHonda Mobile Power Pack e:を用いていることも強みだ。試乗チャンスがあれば乗り味や使い勝手を改めてレポートしたい。

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