2018年に原付2種クラスのリース販売もスタート

SCiBは、負極にチタン酸リチウムを採用し、外力などで内部短絡が生じても熱暴走を起こしにくい構造が特徴。当時、普及していた同クラスのバッテリーの約10倍近い充放電回数(6000回以上)を達成しつつ急速充電性能にも優れ、物理電池であるキャパシタ(素早い充放電特性をもつ蓄電装置)並みの入出力密度を誇っていた。大敵である寒さにも強く、-30℃の低温でも安定した充放電性能を発揮する。

EV-neoに搭載されたバッテリースペックは電動バイク向けにデチューンされていたが、それでもキャパシタのように使える2次バッテリー性能は、ルートセールスやルーティンワークを行う業務には最適だった。

2018年には原付2種クラスの電動バイク「PCX ELECTRIC」のリース販売を開始する。最高速度30km/hや特定交差点における二段階右折の制約を受けないことから利便性が大きく向上した。既存の125ccエンジンを搭載したスクーター「PCX」とほぼ同じ外観、サイズで登場したことも話題となった。

郵便配達業務で使われている「BENLY e:」

2019年には、ビジネス用に特化した「BENLY e:」シリーズを発表する。リース販売ではなく、法人向け販売というスタイルが新しかった。ホンダによると「バッテリーリサイクルの社会的責任の観点から、バッテリーの回収にご協力いただける法人様向けに販売した」という。

BENLY e:は日本郵政にも導入され、2020年1月17日からは郵便配達業務で活躍中だ。ホンダではBENLY e:と、同年12月に発表された電動三輪車「GYRO e:」、「GYRO CANOPY e:」を合わせて「Honda e: ビジネスバイクシリーズ」と呼び、シリーズ全体での累計販売台数は約1万台を数える。

画像提供=ホンダ
BENLY e:シリーズの日本郵政採用モデル
ホンダ発表会にて筆者撮影
「Honda e: ビジネスバイクシリーズ」

今回、発表されたEM1 e:は、こうした30年近い電動バイクの製造・販売での知見をもとに開発された。48V系の電源システムを用いた軽量で高効率なインホイールモーター(駆動のみで回生機能はない)に、持ち運び可能なバッテリーシステムと、現時点、試乗は行えていないがスペックだけでも十分に魅力的だ。

AER(充電1回あたりの航続可能距離)53km(30km/h定地走行テスト値)と、原付1種スクーターが使われる1日あたりの移動距離30km以内を十分にカバーする。インホイールモーターが発する最高出力は2.3PS、最大トルクは90N・m、バッテリー込みの車両重量は92kg。原付1種なので1人乗りだ。最大トルクが排気量1000ccクラスのバイク並みに大きいが、これは減速機をもたないインホイールモーターの計測方法によるものだ。