値上げをすると客離れが起きる当然の理由

そもそもなぜ値上げをすると客離れが起きてしまうのか? それは価格以外の選択肢をこちらが提示していないからです。

ガソリンはどこで買ってもガソリン。実際には各社品質(スペック)に違いがあるのですが、そもそも素人である顧客にスペックがどうのこうの言ったところで違いがわかるはずもありません。この状態であれば顧客は店を選ぶ選択肢を「価格」にするしかありません。結果、値上げすれば競合に顧客は流れ、客離れが起きるというロジックです。

皆さんの業界でも、自社の類似商品はネットを探せばいくらでも出てくるはずです。この状態で自社が「商品を値上げします」と宣言すれば顧客はネットで類似商品を検索し、そして、類似商品があなたの商品の価格より安ければ、競合の類似商品を購入するでしょう。

顧客に「価格以外の選択肢」を提供する

では、どうすれば競合より高い価格設定をしても客離れを食い止めることができるのでしょうか? 答えは、『顧客に「価格以外の選択肢」を提供する』です。

顧客は価格以外の選択肢が与えられていないから価格で選択をしているだけです。もし顧客に価格以外の選択肢を与えることができれば、価格以外の価値を商品に見いだし、競合より高い価格でも自社の商品を選択してもらうことが可能です。

そして、「価格以外の選択肢」を考え出すために有効な考え方が、私が実践してきた「2軸思考」です。

価格以外の選択肢がない状態は図表2で表されます。このままですと、顧客は高いor安いの2択しかなく、必然的に顧客は安売り店に集まります。そして、この価格に追随できないお店は客離れが起きます。

筆者提供

顧客を呼び戻すためには、競合よりガソリンを安く売るしか手はありません。ですが、単なる安売りをしていては収益を確保することはできません。そこで、縦軸の「価格が高いor安い」に、顧客ニーズがありかつ競合が追随できないであろう観点から「新しいカーメンテナンスの提供をするorしない」という横軸を付け加えてみることにしました(図表3)。

筆者提供