カスハラの常套句「責任取ってくれるよね?」への対処法
カスハラは、こちらの想定をはるかに超えてくるケースも多い。
加害者の4タイプの攻撃性のなかで「制裁・報復」としての攻撃性にあたるタイプは、「自分が正義」「責任は相手にある」と信じる傾向が強い。『コールセンターもしもし日記』(フォレスト出版)の著者で、コールセンターに勤めた経験を持つ吉川さんもこのタイプのカスハラの体験を著書で紹介している。
そのクレーマーは、吉川さんのミスを誘って間違った案内をさせ、後日言いがかりをつけてきた。吉川さんは事実を確認し、揚げ足取りだとわかっていても真摯に謝罪している。
「間違った案内をしてしまい、申し訳ございませんでした」
「そうだよね。間違ったこと言ったよね。認めるよね。責任取ってもらえるよね?」
カスハラの刑事事件でも多数見られた「責任取ってもらえるよね」という言葉。不当な要求をする加害者たちの常套句だ。真面目に働く人は自分にミスがあると、つい「自分のせいだ」と思いこんでしまう。吉川さんも、カスハラ常習犯と思しき加害者の罠に落ちそうになる。
「私にできることがあればやらせていただきますが、どのようなことでしょうか?」
「どのようなことでしょうかって、自分で考えてわからないの? あんたバカじゃないの?」
コールセンターへの電話で「上司を出せ」とゴネる人には…
言葉に詰まってしまった吉川さんに上司を出せと客は息巻く。ところが、管理者が代わった途端、吉川さんに対する態度とは一転し、形勢は逆転する。
「責任とはどのようなことでしょうか? 間違った案内をしたことについてはお詫びします。ただ、どのような責任でしょうか。金銭的なことでしたらお断りします」
呆気なくカスハラ加害者は撃退されて、電話はすぐに切れたという。同じように、加害者が相手の落ち度を理由に不当な要求を正当化しようとするケースは、土下座事件でも見られた。
対面で直に加害者と立ち向かわねばならない応対者の場合は、相手との物理的距離を保つこと、迷わずに状況を周りに伝えてサポートを求める行動を取ることも十分に意識してほしい。
とくに「制裁・報復」タイプの攻撃は、融通性のなさや偏った信念、執拗さが人格特性として見られるので、腰を低くして懇切丁寧に説明をしても通じないどころか、かえって悪化させかねない。理路整然と説得を試みても逆ギレされたり、逆恨みから攻撃が過激化するおそれもある。「その件につきましては、法律に詳しい者に相談いたします」など、保留によって状況を一度打ち切る逃げの戦法も有用だ。