もし商品に欠陥があるというクレームを受けたら…
最後に、あなたならどう対応するかを考えてみよう。
あなたは、小さな製菓会社のお客様窓口で働く新人だ。通販がメインで、従業員数も少ない会社だが、動物型の駄菓子を詰め合わせた商品がヒットして問い合わせが急増している。しかし、クレームの電話もかかってくるようになった。
「先日届いたお菓子、一つ形が欠けてたんですけど」
いまあなたが対応している女性は人気商品のリピーターで、今回買った袋のなかの一つが欠けていたそうだ。商品に問題があった場合は、実物を送付してもらって調査する決まりだが、女性は食べきったあとだった。
「他の人が買っても不揃いな可能性があるんですよね?」
「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。焼き菓子のため、どうしても焼く工程で形にばらつきは出るんです」
「私は可愛くて品質のいい物しか紹介しないんです。だからフォロワーも支持してくれてるのに、これじゃ失望されちゃう」
女性はどうやらお気に入りの菓子をSNSで紹介しており、一定のフォロワー数を獲得しているらしい。あなたの謝罪に女性は溜め息をつき、苛立つ声で続ける。
「ちゃんと対応してください! 前に他のお菓子屋さんで文句言ったら、家まで来て頭下げてセット商品をもらったんですけど。おたくも同じことくらいしたら?」
自宅まで来て謝罪し手土産を持ってこいと主張された場合
どうやら自宅での謝罪と手土産を期待しているようだ。健康被害などの緊急性もとくにないクレームだし、現物の確認も難しいので、社内ルールでは対応できない。
「申し訳ないのですが、お聞きした内容ですとご希望にはお応えいたしかねます」
「なんで? お金くれって言ってるわけじゃないし、誠意が足りないですよね。それくらいしてもらわないと皆に紹介した私も申し訳が立たないでしょ!」
さて、あなたはどうするだろうか。
読者のなかには、食品メーカーへのクレームの結果、贈呈品をもらった経験がある人もいるかもしれない。菓子メーカー業界でも、お詫びに菓子の詰め合わせを渡す悪しき慣行があった。大手企業なら安く済む「神対応」をクレーマーに求められ、人手のない中小企業は苦しめられてきた。そのため、2017年に「現物がなければかわりの商品を送らない」というルールが業界全体で決められた経緯がある。