ケース2、自分の意思ではなく中学受験した中2のツトム
ツトムはタケシの兄です。中学2年生で、関西圏では偏差値が高いことで有名な私立中学校に通っています。小学生の頃は勉強が得意でした。ただし、九九を暗記したり漢字を覚えたりすることは得意でしたが、決して勉強が好きだったわけではありません。
テストで100点を取ると親が褒めてくれるのが嬉しくてがんばっていただけでしたが、おじいちゃんがツトムの両親に「ツトムは勉強できるみたいやから、私立の中学校をめざしたらええんちゃう? 塾代なら出したるわ」と提案しました。その鶴の一声で、ツトムは小学3年生の2月から塾に通い始めました。本当はカードバトルやゲームが好きで、友達と遊びたかったのですが、両親から受験が終わるまでゲームを禁じられてしまいました。
弟が自由で楽しそうに見え、ケンカでつい殴ってしまった
ツトムは自分の平均偏差値よりかなり高い学校に合格しました。しかし、中学校に入ってからのツトムは、実力以上の学校に入ってしまったためか、どんなにがんばっても授業についていくのがやっとでした。両親や祖父母を落胆させたくなくて、ツトムは必死に勉強していますが、クラスでの順位は常に下から数えて1桁圏内です。
弟のタケシは塾に行かず、地元の公立中学に進むようです。妹とも仲よしで、なんとなく弟のことを羨ましく思ってしまいます。この前、ちょっとした言い争いから弟を拳で殴ってしまいました。鼻血を出して泣く弟を見ながら、自分も泣いていることに気づくのです。それからツトムは、自分の部屋に引きこもるようになって、学校にも行っていません。
<解説>
中学受験をする子どもは一定数います。私立、国公立にかかわらず、中学校を受験する理由は様々です。ツトムの場合は、本人の希望ではなく、小学校の成績がよかったことに目をつけた祖父と、その意を酌んだ両親の意向でした。ツトムのように、偏差値の高い上位校を受験対象とする子どもたちは、数年間、長ければ小学1年生の頃から、塾通いをします。受験期が近づくと、プラスで個別指導教室に通ったり家庭教師がついたりすることもあり、遊ぶ時間がとれないどころか、睡眠時間が削られることさえあります。